火の鳥
ひのとり

伊藤整のベストセラー小説を、井上梅次監督が月丘夢路を主演に迎えて映画化した文芸巨編。一人の舞台女優が男性たちに裏切られながらも、逞しく自分の意志で行動していく姿を描く。仲代達矢の本格デビュー作でもある。

バラ座の中心女優・生島エミは父の死の悲しみを押し隠して舞台で熱演し、その姿に観客は熱狂した。その夜、劇場裏のバーで祝杯を挙げていると映画監督の富士がやってきて、映画への出演を打診される。エミの愛人であり演出家・田島有美はこれに反対した。一方、エミには杉山という男がつきまとっていて、執拗に田島との仲を裂こうとしていた。家に帰ったエミは何故か急に映画に出演したくなり、その夜、泊まりに来た田島にその希望を打ち明けた。妻子がいながらエミに逃げられるのを怖れる田島は、それほど強く拒むことができずに映画出演を許してしまう。無論、エミがいつも燃えていなければ生きていけない炎の女であることを知っての上で。翌日、エミは主演する『火の鳥』の相手役を探して富士監督と撮影所内を歩いていた。その時、たまたまシャツを肩に掛けた半裸の青年に眼が止まる。その夜、スター北原嬢の誕生パーティでエミはその青年に再会。二人は恍惚に踊りあうのだった。二人の様子に気が付いた富士監督はその青年・長沼敬一を抜擢することに決め、エミはこの青年を愛するバーのマダムを演じることになる。撮影も快調に進み、いよいよキスシーンを撮る日、二人は芝居ではない激しい抱擁と接吻を交わすのだった。

日本
製作:日活 配給:日活
1956
1956/6/14
モノクロ/99分/スタンダード・サイズ/11巻/2717m
日活
【神奈川県】横浜市(横浜港、外人墓地)/藤沢市(辻堂海岸、藤沢・公民館前)