よしきりが葦の葉蔭に鳴く水郷潮来は遊客を乗せる釣り船で賑わっていた。その一隻の船頭は珍しく若い女で、名をあや子といった。あや子には宮川という恋人があり、バスの運転手をしていた。あや子の親友の寺島雪江はそのバス会社の車掌をしていたが、宮川とあや子の恋を祝福しながらも、やはり何となく嫉ましいものがあった。しかし近頃、宮川があや子に冷たいのを見て淋しく思っていた。というのは宮川は、遊覧船の機関士山形健二があや子を好きに思っているらしいと知ったからだった。確かに山形は妻を亡くしてから諦めきれずにいたが、あや子を見てから彼女に好意を寄せるようになっていたのだ。あやめ屋の女将加代からあや子と宮川の仲を聞いて山形は暗い気持ちになり、艶歌師三田道也の唄に憂さを晴らすのだった。あやめ踊りの夜、挨拶なしに縄張りを荒らしたというので、三田と徳さんは街のヨタ公常吉、仙公らに因縁をつけられたが、宮川に救われ三人は、あやめ屋で酒を飲み交わしていた。一方山形は、あや子が雪江に踊りに誘われて出かけた留守宅を訪れ、あや子の母・房にあや子との結婚を申し込んだが、宮川が家の裏手でそれを立ち聞きしてしまった…。