神阪四郎の犯罪を通して、人間のエゴイズムを究極に衝く心理社会劇。
三景書房の編集長神阪四郎氏は、検事の冒頭陳述によると書房における業務上横領が発覚するや、これを誤魔化すために、かねて関係のあった被害者梅原千代のダイヤの指輪に眼をつけ、被害者を利用して偽装心中を図ったのだと云われている。証人として呼ばれた評論家の今村徹雄、編集室に勤める永井さち子、妻の神阪雅子、歌手の戸川智子の四人は各人各様の証言をする。神阪氏との交際を記した梅原千代の日記もあったが、それさえも果たして神阪氏の真実を衝いているのか疑問であった。