浜寺社長令嬢・宗子の上京は、その子会社格の小会社に勤務している小峰達也と小田切渚の愛し合う二人の仲に思わぬ波紋を投げかけた。宗子は父の健策に連れられて、四国の高知から達也との見合いにやって来たのだ。祖父七蔵との淋しい二人暮らしの渚は、達也あっての人生だった。その頃、伯母夫婦に子持ちの石森との結婚を強いられながらも、強く拒み続けて、ひたすら達也への愛情に燃えている渚であった、その達也にしても、渚以外の女性と結婚しようなどとは夢にも思わず、周囲からとやかく進められる宗子との交際も、結局は外面的に極めて事務的に処理出来るつもりだった。浜寺産業と深い関係にある自分の商事会社への打算的配慮から、何とか二人を結び付けようと、その政略結婚に焦り気味な達也の父雄造の命令的な言いつけにも、むしろ反抗的に受け流すだけだった。そんな達也だと知りながらも、女心の弱さから、渚は何かと不安めいた気持ちに襲われる自分を励ますのだった。然し、何事にも従順な渚と徹底的に断り切れぬ事情にある達也は、信じあい愛し合っているにもかかわらず、いつの間にか暗い影に包まれていった。それでも、どんな邪魔者にも負けないお互いの強い愛情を信じながらーー。