邦徳丸の船員、花村千吉は四ヵ月ぶりに懐かしい港へ戻ってきたが、上陸早々安藤長太郎という男の危機を救ってやった。十三の時に両親を失い、ヤクザの世界に足を踏み入れた安藤は、足を洗ってまともに暮らすためにこの港にやって来たのだが、せっかくの波止場の仕事も港湾労務者の古顔としてハバをきかせている鉄拳の政、浜っぽの虎、とんびの辰といったならず者に因縁をつけられ、すんでのことで焼きをいれられるところだったのである。花村は航海から帰るたびにきまって訪れるバー“ラバー”で、マダムの葉子やバーテンの健一、それから葉子の一人息子秀坊の歓迎を受けた。そして、葉子の姪初枝が元気で昼間洋裁学校に通っていると聞いてホッとするのだった。