日本の空の玄関口、羽田空港警備出張所に勤務する多田警部に戸崎刑事は、夕刻香港から到着する旅客機の乗客名簿の中に洪大全の英文字を見つけ、緊張した面持ちになった。来日四回目の洪大全という三国人は、密輸関係の大物ではないかとブラックリストにも載っていたが、単なる疑惑だけで確証もつかめないままでいた男である。今度こそはと決意した戸崎は、税関支署監視課の遠藤課長に協力を依頼するかたわら、洪についての情報提供者小松にも動静を探らせることにした。この小松という男は、麻薬の密売容疑で戸崎に捕らえられたが、戸崎の世話で今では足を洗い、浚渫船で働いているが、元の仲間の仕返しを恐れて怯え切っていた。やがて着陸した旅客機から大勢の乗客達と降りて来る洪大全の平然とした態度は不敵にさえ見えた…。