若くして乳がんに倒れた薄幸の歌人・中城ふみ子の姿を通して描く、田中絹代監督が全女性に問う話題の超大作。
下城茂との不幸な結婚生活に終止符を打つため、ふみ子は子供二人を抱えて実家に戻った。その頃、ふみ子と幼友達であるきぬ子の良人・堀卓が外地から引揚げて来たのを機に、北海タイムス社記者である山上の家で歌会が催された。誘われるがままに何篇かの歌を出したふみ子は、堀や山上の絶賛を浴びた。彼女の悲惨な生活詩から不幸を知った歌人の堀は、見送りの途すがら彼女を勇気づけ、励ました。実家に戻ってからのふみ子は、母親たつ子と弟・義夫の許で幸福だった。ひと月ほど経った頃、仲人の杉本夫人がやって来て、離婚手続きが済んだが昇とあい子の二人を引き取ることは駄目だったと伝えた。断腸の想いで昇を良人の許に去らせてからというもの、ふみ子は母性の苦汁をなめさせられる日が多かった。そんな折、堀が胆嚢炎をこじらせて死んだ。教会で白い花々に包まれた堀の写真の前に、ふみ子は泣こうにも泣けなかった。下城家から昇をこっそり連れ戻し、親子水入らずて東京に職を見つけようと決意したふみ子は、この頃から自分の乳房が疼き始めるのを知った。その痛みはやがて激痛へと変わり、彼女はその痛みが乳癌からであることを知った…。