幼きものは訴える
おさなきものはうったえる

鹿児島、広島、神戸、大阪、京都、北陸、青森、函館と日本縦断ロケを敢行して贈る、現代日本の厳しい現実を子供の眼を通して描く異色大作

ここは日本の最南端—桜島が見える鹿児島県谷山町である。今日も悪童たちの囃し歌が聞こえてくる。ーへちまに、ひょうたん首くくり、ぶらりぶらり下がった、ぶらり首くくり―。勝は歯を食いしばった。というのは、父・山崎剛陸軍少将が、部下の罪と上官の命を含めて南方の一孤島で絞首台の露と消えた事に、幼い勝は父への尊敬を持っていたにもかかわらず、時代の英雄は今となっては、へちま呼ばわりとなってしまったからである。悪童たちだけでなく、大人の中にも、この幼い不幸な兄妹をむしばむものがあった。勝は妹の清子と病身の母親と、古本屋を営む伯父勇作の家に侘しく間借りしていたが、幼い兄妹を残して母親は淋しい生涯を閉じた。賛美歌とともに野辺の送りをしている時、兄妹の祖父、山崎信助が訪ねて来たが、くやみに来たというより山崎剛の家族のために残された年十万円の恩給が目当てであった。その結果、勝だけ恩給と共に心ない大人によって、鹿児島市の信助の家に引き取られていった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1955
1955/11/9
モノクロ/12巻/2623m/96分/スタンダード・サイズ
日活
【北海道】函館市(函館山、函館港、立待岬、啄木の碑、トラピスト修道院)
【青森県】青函連絡船、桟橋、八甲田山/青森市(青森駅構内)
【福島県】いわき市(常磐炭鉱)
【滋賀県】琵琶湖附近
【大阪府】大阪市(桜宮大橋、戎橋、道頓堀、大阪城、大阪駅、▲野球場のスタンド、▲映画館)
【京都府】京都市(実景)
【広島県】広島市(実景)
【鹿児島県】桜島町(桜島遠景、溶岩地帯)/谷山町(現・鹿児島市)/鹿児島市((谷山町、郡元墓地、城山公園、天文館、西田橋、鹿児島駅、鹿児島港桟橋、垂水汽船内、海潟、溶岩、南洲神社、清水中学校、大通り)/志布志市
▲東北の高原