ふとしたことから悪の道に入った青年が、人情派の刑事や花売りの娘に励まされて更生しようとするが…。井上梅次監督による社会派青春映画。長門裕之と芦川いづみが瑞々しく素晴らしい。
野村啓一は横浜のさる工場に勤める職工で、母親・かねの自慢の息子であった。しかし啓一には、彼の出世を唯一の生甲斐とする母親の期待が寧ろ重荷な位で、やがて彼に訪れる不幸もそれに起因するのである。工場でピンポン大会が催されたある日のこと、横浜の歓楽街にたむろするパイラーと呼ばれるポン引きや与太者に好奇の眼を向けながら、啓一は親友の茂と連れ立って、とある飲み屋にくつろいでいた。この夜、ふとしたことから、ワンツーの健と仲間に因縁をつけられ殴り倒された。正義感の強い啓一は、この理由もない仕打ちに憤慨し、交番に届け出たものの、相手にされず悄然と家に帰った。それを知ったかねは、不良に対するよりも警察の仕打ちに憤然となるのだった。それというのも、自動車事故で死んだ時も、酔っていた夫を悪者扱いした警察に恨みがあったからだ。二人してこの夜は貧しき者に対する社会の冷酷さをなじり合った…。