男がよくて剣がたつ天下の若殿松平長七郎が、足の向くまま気の向くままの旅の途中で、謀反を企む天草の残党に敢然と破邪の剣を振るう痛快時代劇
武士道華やかなりし来頃、青空にのどかな白雲が流れる街道の松並木で、浪人庄介、甚左、団九郎の三人はさっきから腹の虫がグウグウ鳴っている。ここらで何とか一芝居と思っているが、なかなか良いカモが見つからぬ。そこへ松平長七郎が牛車に乗ってやって来た。団九郎は早速「おいおい、そこの牛浪人、一銭もなくとも、飲みたい、食いたいほうだいだ」気楽なことの好きな長七郎は彼等の仲間に入った。そこで、三人は長七郎とは知らぬまま、城下の宿屋よろず屋に案内。松平長七郎と主人の万兵衛に告げたから大変。上を下への大騒ぎ、万兵衛以下奉公人全部がお目通りするということになった。長七郎はとぼけて「実は俺は長七郎ではない。金もこれしか…」と名乗り出ると、万兵衛も呆れて長七郎を使用人の一人としてただ働きさせることにした。長七郎こと長助は何をさせても役に立たなかったが、ある日、土地の博奕打ち、般若の勘兵衛とその子分稲妻の源次がイカサマ賭博で一人の商人を文無しにしたあげく、お千代という姪をカタに持っていくとよろず屋に乗り込んできた。
※巻数・m数・分数は前後篇合計