アパートすみれ荘には様々な住人が住んでいる。夢夫は、レコード作詩家を夢見て毎日山のような原稿用紙に埋まっているが、今までレコードになったのは「忘れないよ」という歌一つきり。管理人の佐々木夫婦は内職で高砂舎をやっているが、貧乏易者の山部感斉は佐々木のところにある見合い写真の卦をたてたり、住人の女給の手相をみたりしている。上の部屋の信麿は勘当された放蕩息子だが、チンドン屋の娘・まり子を追いかけまわし、夢夫に切ない恋の詩を代筆させ、まり子に捧げている。夢夫もまり子が何となく好きなのだが、信麿が詩を300円で買い上げてくれるのでアルバイトと割り切って仕方なしに書いているのだ。ある日、夢夫はまり子を公園に誘う。そこでまり子は夢麿のことを詩人だと誉めた揚句、夢夫が書いたとは知らずに読んで聞かせる。夢夫は釣り込まれて一緒に暗誦したので夢夫が書いたことがばれ、まり子は怒って帰ってしまう。いっぽう、信麿の部屋に妹の美智子が様子を見に来るが、信麿は美智子の指環を取り上げ、家から金を持ってきたら返してやるとワイシャツのポケットにしまう。翌日、アパートの住人の洗濯を引き受けているまり子が信麿の部屋に来た時、信麿は指環のことをうっかり忘れてまり子にワイシャツを渡してしまう…。