海沿いの温泉町を背景に、歌と恋とを織り交ぜて、明るく温かい人情の世界を描く甘辛喜劇の決定版。
海沿いの温泉街に今宵もまた、流しの歌声が流れている。それは、未来のレコード歌手を夢見て練習に余念のない水原ヒロシの歌声だ。ある夜、ヒロシと相棒の三平が街を歩いていると、旅館の応接間からピアノの音が流れているのに気付いた。しかし、そのメロディを奏でているのがまさか歌謡作曲界の第一人者である古賀先生であるとは知らなかった。しかし、その部屋の女中であるテルは、本人から古賀だと明かされて有頂天になって喜んだ。というのも、テルはヒロシの恋人で、日頃から彼のためにチャンスを掴んで、早く一流のレコード歌手に出世して欲しいと切に願っていたのだ。彼女は早速ヒロシたちを呼び、あまり乗り気でない古賀に、東京でヒロシの歌声をテストしてくれるよう約束をとりつけた。後日、希望に燃えるヒロシと三平は古賀の名刺紹介状を持って上京した。早速テストを受けるためレコード会社を訪れるが、驚いたことに、その紹介状は偽物だとして追い返されてしまう。