生きとし生けるもの
いきとしいけるもの

『路傍の石』などで知られる山本有三の原作を、橋本忍が現代風に脚色した文芸作。山村聰、三国連太郎ほか豪華競演で人間の平等を描く。西河克己の日活での第一回監督作品でもある。

曾根鉱業に勤める伊佐早靖一郎はボーナス袋に一万円多く入っていたが、弟・令二の月謝に使ってしまった。会計課の菅沼民子は一万円不足した責任から、自分で穴埋めをした。靖一郎は民子にこのことを告げなければと良心の呵責に責められていたものの、それを機会にいつしか靖一郎と民子の間にはほんのりした愛情が生まれていった。やがて会計課から社長の息子・曾根夏樹の秘書となった民子は夏樹から結婚を申し込まれた。夏樹の父・周作は事業家の令嬢・香取あき子と息子が結婚してくれればと望んでいたが、黙って二人の間を見守っていた。民子から夏樹に求婚されたという話を聞いた靖一郎は、民子の幸せを思って彼女から身を引こうと決心した。このことを知った弟の令二は金持ちのために自己を犠牲にする兄の卑屈さに激しい苛立ちを覚えた。令二は曾根鉱業の北海道支社に就職した。令二は正義感から資本家と闘う労働組合に加わり、炭鉱ストにはその先頭に立って奮闘していた。このストを聞いた社長の周作と息子の夏樹は秘書の民子を連れて北海道に駆けつけた。靖一郎も令二の反省を促すために後を追った。靖一郎は、入社させてくれた会社への恩を仇で返すような令二の態度を是が非でもなだめなければならなかったのだ。やがてストは終わり、令二はしぶしぶと靖一郎に従って、社長たちが泊っている遠藤老人の家に行った。平謝りに謝る靖一郎の後ろで唇を噛んでいる令二を見た遠藤老人は、周作のかつての面影をその中に思い出すのだった。周作はかつては貧しい一鉱夫だったが、彼の意思の強さ、不屈の精神に感動した遠藤老人の援助で今日の社長になったのだった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1955
1955/2/25
モノクロ/117分/スタンダード・サイズ/13巻/3214m
日活
【北海道】赤平市(住友鉱業赤平鉱業所)
【青森県】青函連絡船
【東京都】中央区(呉服橋)/港区(神宮外苑)/台東区(御徒町三丁目都電停留所、上野駅)/三鷹市(井の頭公園)/千代田区(常盤橋公園)/大田区(羽田飛行場)/▲デパート店内とその屋上、▲省線ガード下 ▲東北本線急行列車