地獄の剣豪 平手造酒
じごくのけんごうひらてみき

人生の辛苦に打ち克つ限りなき愛情の美しさ、尊さ、また生の拠り所を失い、追いつめられた人間の心理を深く赤裸々に抉る日活時代劇異色作。

不治の病と烙印を押され、生涯の望みを断たれてからというもの死と逸楽にのみ身をゆだね、野良犬のように世を渡り歩く哀れな素浪人・平手造酒。半年前、千葉周作の師範代を決める山部幾之進との立合いに、先勝一本優勢だった造酒は喀血に倒れ、勝を譲った。数日後、路上で会った二人は剣を抜きあい、山部を斬った造酒は道場を破門された。やくざ気取りの酒屋の息子・仙太郎は、剣豪の造酒にやくざの繁蔵一家への仲間入りを勧めたが、相手にされなかった。酒、女、恐喝。情け容赦ない冷酷漢・平手造酒だったが、とある旅籠屋で見識りとなったお吟の存在が、再び生きることへの執着を持たせた。喀血して道端に倒れていた造酒を繁蔵が助け、自分の用心棒として延命寺の離れに住まわせた。何かと面倒をみるお吟の限りない愛情により、造酒は健康を取り戻した。しかし、幸福の壁は脆い。造酒の背後に、山部幾之進の弟・平八郎が忍び寄り、造酒を狙った。危うく難を免れた同じ日、お吟の昔の夫・朝吉が刑期を終えてお吟を訪ねて来た。今なお激しくお吟を恋い慕う朝吉は、お吟の頼みも聞かず、造酒に別れてくれるよう泣いて頼むのだった。嫉妬と不安に心乱れた造酒は朝吉を斬り捨てた。それは、同時にお吟との相愛の絆を絶っことだったが…。

日本
製作:日活 配給:日活
1954
1954/10/19
モノクロ/105分/スタンダード・サイズ/11巻/2892m
日活
【千葉県】香取市(旧佐原市・利根川)