愛と死の谷間
あいとしのたにま
平凡な日常に潜み普段は顔を見せない不安な感情、その陰の部分にとりつかれた人々が一縷の愛情を頼りにすがり生きていく姿を鋭い風刺とユーモアで描く。
竹内愛子は貧しさの中で育ち、働きながら医者になった苦労人で、横浜の診療所に勤めていた。将来的には開業医として独立したいというささやかな希望をもっているが、基本的には幸福で、言い換えれば平凡な毎日を送っていた。しかしある日、ひとりの怪しげな男に尾行されていることに気付く。その瞬間から愛子は日常生活から逸脱し、別の次元に迷い込んだような感覚に陥る。なぜその男が自分を尾行したり見張ったりするのか、心当たりは全くなかった。知らない誰かにいつも見られているということがこの上ない恐怖だったが、周りに相談しても過労や被害妄想のせいと言われてまともに取り合ってくれない。この不条理な恐怖に愛子は敢然と抗議しようとある行動を起こす。
日本 製作:日活
日活
1954
1954/9/21
モノクロ/117分/スタンダード・サイズ/13巻/3207m
日活
【東京都】台東区(浅草石浜町(現在の寿町)/荒川区(南千住)
【神奈川県】川崎市(新鶴見駅操車場(=愛子を潔が助けるクライマックスシーン)、新鶴見駅近くの沼地(大沢診療所のセットを組んだ場所))/横浜市(横浜港湾上で借り切った遊覧船(=愛子が潔の正体をつきとめる場面))
※全体の三分の二が夜間撮影。
※劇中のビヤホールはセット。