三國連太郎を主演に迎えて、一人の俳優が辿る栄光と挫折を描いたバックステージもの。バイプレイヤーとして知られる菅井一郎の第一回監督作品で、脚本を新藤兼人、監修を吉村公三郎が勤めている。
加地茂樹、里村東介、春日奈々子ら三人が所属する小さな劇団「緑の風(ヴァンベール)」は経営破綻から、座長の林に連れられドサ廻りへと落ちて行った。だが一向に目が出ず、ついに奈々子は座長からストリップを勧められる。そのことに憤慨した三人は脱退を決意して帰京し、エキストラや映画館のフィルム運びをして当座をしのいでいた。ある日、茂樹と東介は奈々子の父がやっている一杯飲み屋で新映撮影所の宣伝部員・北野に出会い、茂樹は俳優試験に応募することを勧められる。茂樹は北野の手落ちから試験は受けられなかったが、宮森宣伝部長と沖山プロデューサーの目にとまり、映画界入りすることになった。茂樹はベテラン女優・京極真弓とのコンビで一躍スターに躍り出た。人気に酔いしれ得意絶頂の茂樹はいつしか真弓と豪華なホテルで愛欲の生活を送るようになる。茂樹を密かに愛する奈々子は東介とともに彼を訪ねるが、余りにも冷たい態度に寂しく帰っていくのだった。人気スターとしてチヤホヤされる茂樹はますますのぼせ上り、仕事への注文や出演料の増額を言い出すようにまでなっていく。やがて彼の傲慢な態度は撮影所の重役や所長を怒らせ、彼は役に就けなくなっていく。