戦後、製作を再開した日活の記念すべき現代劇一作目。当時、全国の女性を感涙させたNHK連続ラジオドラマの映画化で、青年弁護士と人妻の悲恋物語を小林桂樹と宮城野由美子の共演で綴る。
高見沢義文は銀座の酒場でピアノ弾きをしながら弁護士の勉強を続ける純情な青年。兄・利光の結婚式の日、義文は久しぶりに郷里に帰ったが、兄嫁となる女性・裕子は幼馴染の頃から彼が人知れず恋をしていた人だった。一年後、義文は楽団イエロー・スターズの一員となって働きながら弁護士試験の勉強に打ち込んでいた。一方、利光と結婚した裕子の生活は幸せではなかった。高見沢家の当主として製材所を経営する大地主でありながら、利光は仕事を顧みず酒を飲んでは芸者遊びをし、事業も生活も荒んでいくばかりだった。そうした折、弁護士試験に合格した義文が久々に東京から帰ってきた。義文は裕子の不幸な結婚を知り、変わり果てた兄の生活を見て利光に激しく詰め寄るが、裕子にはかえってそれが切なかった。二人の心は千々に乱れて、今にして知る断ちがたき愛情に胸が裂ける思いであった。