慈悲心鳥
じひしんちょう
菊池寛の原作を荒巻芳郎が脚色、渡辺邦男が監督するトーキーで、江川宇礼雄・岡譲二・黒田記代が共演
あらすじ 法科大学生篠原俊輔と河井龍太郎の二人は高校以来の親友だったが、西片町の先生、駒井新平の令嬢静子を同じように恋していた。篠原は静子の父・新平に令嬢との結婚を嘆願し、熱情的な河井は直接行動を取って令嬢の意中を訊こうとした。しかし、内気な静子は河井の熱情にともすれば圧倒されながらも諾否を与えず両親に話してくれるようにと答えるのみだった。卒業試験を目指して二人の間に火のような競争が始まる。極度の勉強に心身とも疲労しつくしていた河井は、不幸にも試験開始日を前に突然腸チフスのために倒れる。病癒える頃、彼は見事に優等で大学を出て某官庁に奉職した篠原と静子の間に婚約が成立したことを知る。「ナンジノケッコンヲノロウ カハイリウタロウ」めでたい結婚披露の席上で祝電を読み上げていた仲人が顔色を変えて口ごもった。それから七年の歳月が過ぎた。篠原と静子は一子・洋一をあげて楽しく幸福な家庭生活を続けていた。突然、摘発された府市疑獄事件に連座して篠原俊輔は司直の取り調べを受けねばならなくなった。しかも、皮肉か、偶然か、係検事はその昔の恋敵・河井龍太郎その人だった。病床に呻吟する篠原を冷然と見返して家宅捜索から引き上げて行く河井を見守った篠原の眼に悲憤の涙が光った。その夜、自己の潔白と洋一の将来を静子に託す遺書を残して篠原は自殺した。「河井のことも許してやってくれ」遺書の一節を見つめたまま、河井龍太郎は遺骸を前に男泣きに泣いた。
日本 製作/多摩川撮影所
日活
1936
1936/7/1
モノクロ/スタンダード・サイズ/9巻/2513m/92分
<ご注意>
戦前の製作作品(1942年以前)は、資料の不足などの事情により、当HPのデータの内容が必ずしも正確なものとは限りません。
日活