コラム「フォーカス」へ、ようこそ!当コラムでは、日活作品や当社が関連する事業などに"焦点(フォーカス)を当て" 様々な切り口でその魅力をお伝えします。
日活ロマンポルノ第一弾『団地妻 昼下りの情事』『色暦大奥秘話』が公開されたのは、1971年11月20日。今年は55年目の節目にあたります。これを記念して、写真家・編集者の都築響一さんがキュレーションを手がける大道芸術館で、これから数回にわたってロマンポルノの歴史をふりかえる連続トークショーが開催されることになりました。
第一弾は「ロマンポルノとはなんだったのか?」と題し、ロマンポルノ作品の企画を数多く担当した山田耕大(やまだ・こうた)さんに、ロマンポルノ全盛時代の思い出・秘話・裏話をたっぷり語っていただきました。
映画評論家の轟夕起夫さんがトークショーの模様をレポートしつつ、ロマンポルノとは何だったのか?というテーマに迫ります。ぜひお読みください。

祝・日活ロマンポルノ55周年!大道芸術館 × 日活ロマンポルノ トークショー開催!!
文:轟夕起夫(映画評論家)
大道芸術館×日活ロマンポルノ――期待はしていたが、実際に現地へと足を運んでみるとこれが予想を飛び越え、すこぶる刺激的で面白かった。去る8月21日、東京・墨田区向島の“大人のサンクチュアリ”にて開催された「ロマンポルノ55周年企画」、日活と初コラボレーションを果たした連続トークショーの第一弾のことである。
下町の老舗の元料亭を一棟まるごと改装した、情緒溢れるmuseum of roadside art=大道芸術館。トークテーマは題して「ロマンポルノとはなんだったのか?」と、第一弾だけあってかなり“正調”と言える。2階に作られたスナックバーのカウンターとフロア内には予約客が集い、お勉強モードとは無縁の楽しいお喋りを食と酒と共に愉しもうという趣向で、当階のみならず、1〜3階にわたって迎えてくれるのはオリエンタル工業のラブドールや昭和大衆文化のレアなアウトサイダー・アートの数々だ。

ゲストは1978年日活入社、助監督志望であったが、配属された企画部で多くの作品に携わった山田耕大さん。退社後の86年、企画製作会社メリエスを立ち上げ、大ヒット作『私をスキーに連れてって』(87年/監:馬場康夫)、『木村家の人々』(88年/監:滝田洋二郎)など、次々と映画界に新風を吹き込み、現在は脚本業に専念されている。トークの聞き手・進行は編集者、作家、写真家として知られ、当芸術館のオーナー、キュレーター兼ディレクターでもある都築響一さん。二人が交わしたお話と会場の様子をここにギュッと要約し、補足を加えながらレポートしてみたい。

山田耕大さん(左)、都築響一さん(右) 大道芸術館にて
山田さん曰く、「当時の若者はアメリカン・ニューシネマ、ATG(アート・シアター・ギルド)、そして日活ロマンポルノ、この3つの潮流に惹かれ、僕自身も大学時代(東大経済学部)からそうでした」と。1971年にスタートし、88年に一旦ピリオドが打たれるロマンポルノ(初期表記は“ロマン・ポルノ”)だが、特に60年代末から70年代初頭、産業的に邦画全体が斜陽化に直面し、起死回生、レイティングが18禁の成人映画路線へと舵を切ったのだ。裸やセックス描写が歴然と“見せ場”としてあるが、そのエロティシズムと拮抗する物語以上の何か=“ロマン”が重要なジャンルムービーであり、玉石混合、多彩な作り手たちのプログラムピクチャーとして量産され、撮影所システムを機能させてきた歴史を持つ。
ちなみに記念すべき第1作『団地妻 昼下りの情事』(71年/監:西村昭五郎)は、言わばニューシネマのような衝撃系のエンディングで、「売春組織と団地妻」というトピックは、ATGが率先して紹介していたジャン=リュック・ゴダール監督の『彼女について私が知っている二、三の事柄』(67年/日本公開は70年。フランス映画社と大島渚の独立プロダクション・創造社による共同配給)の影響を感じさせ、タイトルは、オードリー・ヘプバーン主演の『Love in the Afternoon』(57年/監:ビリー・ワイルダー)の“邦題”を想起させるような攻めたセンスだった。

©日活
さて入社した1978年、9月に会社名が「日活」から「にっかつ」へと変更された(元に戻ったのは96年)。山田さんはといえば、追って師匠となる佐々木志郎企画部長に「企画を10本ほど持って来い」と命じられ、四苦八苦しつつも提出。最初に通ったそれは、芥川賞作家・開高健の自伝的小説『青い月曜日』をもじって「ブルー・バージン」と題名を付けたもので、翌年、『クライマックス・レイプ 剥ぐ!』(79年/監:藤井克彦)として完成する(クレジットは助監督から転身した村井良雄と連名)。哀切極まりない脚本に仕上げた斉藤信幸はフランソワ・トリュフォー監督のフランス映画『ピアニストを撃て』(60)のテイストを狙ったのだとか。そういえばフリー後の山田さんが企画に名を連ね、斉藤信幸が西村望の短編小説 「紡がれる」を“斉藤水丸”名義で演出した後期ロマンポルノの一本『母娘監禁 牝』(87)も切な過ぎる作品で、こちらは荒井由実の「ひこうき雲」のカヴァーバージョンが効果的に使われていた。

©日活
トークでは企画部での単独担当デビュー作についても触れられ、こちらのタイトルは宮下順子、谷ナオミ、原悦子と人気女優が揃い踏みした『おんなの寝室 好きくらべ』(78年/監:白鳥信一)。12月末に公開された正月映画である。プロデューサーは辣腕で鳴らした三浦朗で、山田さんは神代辰巳監督の名作の誉高き『赫い髪の女』(79年)も三浦プロデューサーに指名されて企画担当へ。

©日活
大道芸術館のカウンター・バーの背後は巨大なモニターになっており、トーク内で話題となる作品のシーンを、(日活の協力のもと)適宜映し出すことが可能であった。『赫い髪の女』のオープニングを観る流れとなり、そのオペレーションを任されていたのはロマンポルノ愛に満ちたスタッフの五十嵐健司さんだ。

“上映”が開始されるや、1stショットからグッと引き込まれる。カメラは望遠でローポジション。ヒロインの宮下順子がトンネル奥より姿を現し、右車線上を歩いて、こちらに向かってくる。左車線を行くクルマには、一瞥も食らわさずに。そこに関西圏、いや、日本を代表するブルーズ・バンド、憂歌団の名曲「どてらい女」が流れ始めるのだが、木村充揮の味わい深いボーカルがたまらない! カメラがしばしトンネルの外側、海の景色を捉えて横へ横へとパンすると、海沿いの道を走っていたダンプカーがフレームインしたのち、トンネルを抜けたヒロインへと接近してゆく。彼女の出立ちは赤いスカートにブーツ、上は半纏(はんてん)もしくは褞袍(どてら)を羽織っており、これが見事にカッコいい。
で、曲調が変わってアップテンポになり、縦の構図の中、短いカッティング、カットバックでダンプ(助手席にW主演の石橋蓮司がいるのが見える)、女の後ろ姿(光の効果で髪が輝く)と、小気味よいショット繋ぎが続く。両者が一瞬すれ違って、女の横顔、ダンプを目で追い、風でさ〜っとなびく髪が一段と映え、朱色の文字で抜群のレイアウトでもって「赫い髪の女」とタイトルが出たところでストップモーションに。ここまですべて、曲と映像を同期&融合させている――。

『赫い髪の女』撮影風景。左端が神代辰巳監督、中央に宮下順子さん ©日活
この痺れるオープニングの素晴らしさに、会場の温度が一段と上がった。現代日本文学史上、ひとつの到達点を示した文豪、中上健次の短編『赫髪』の映画化である。ダンプカーの運転手役の石橋蓮司と愛欲の極地を見せて、宮下順子は報知映画賞の主演女優賞に輝いた。山田さんの貴重な証言によれば憂歌団の起用は、(今や映画監督としても評価される)脚本家の荒井晴彦が神代監督に紹介し、中上健次は“荒井脚本”を大いに気に入り、「『枯木灘』以外の自作の映画化権を全部与える」と述べたとのこと。一方、神代作品については、「客入りは悪いがベストテンの常連、ロマンポルノのステータスを保持する意味で、社内的には“税金”扱いされていた」と。こういった得難い話を聞けるのが嬉しい。ちなみに神代辰巳は、学生時代から山田さんが仰ぎ見ていた“神様的存在”だった。

『赫い髪の女』©日活
他に、部分的にモニター上映された作品も記しておこう。劇団・東京乾電池を旗揚げ(=76年)して頭角を現しつつあった時代の柄本明が怪演を披露、ベンガル、綾田俊樹、高田純次ら劇団員総出演で岩松了がギャグ指導(アドバイザー)でクレジットされた『Mr.ジレンマン 色情狂い』(79年/監:小沼勝)。カテゴリー的には不良女子高生の青春アクション物だが、ラストは主演の倉吉朝子が制服姿で浜辺をクラウチングスタートし、爽やかに走って締め括る『スケバンマフィア 肉刑』(80年/監:池田敏春)。それから人気歌手の畑中葉子主演、山田さんが内トラ(スタッフのエキストラ)で顔を出している『後から前から』(80年/監:小原宏裕)や、かの八代亜紀の同名ムード演歌、大阪市政イメージソングを題材とした歌謡ポルノ『ブルーレイン大阪』(83年/監:小沼勝)などなどバラエティに富んだラインナップで、併せて各作品と映画人たちの、なかなか聞けない秘話が語られていった(トンデモない風体なのにモテ男だった神代辰巳の素顔。『Mr.ジレンマン〜』の結局逃げてしまった脚本家、奇才・大和屋竺の常軌を逸した言い訳ぶり。『ブルーレイン大阪』の当初の主演女優ドタキャンエピソード、等々)。

『Mr.ジレンマン 色情狂い』©日活
振り返れば「その都度、自分が観たい作品を企画していた」そうで、例えば、次第に“男と女のセックス描写”が食傷気味になり、そこから発想が広がって大ヒット作『セーラー服 百合族』(83年/監:那須博之)へと行き着いたのだとか。トークショーも終盤に差し掛かり、進行の都築さんは改めて、今回の「ロマンポルノとはなんだったのか?」というテーマに水を向けた。「自分のアイデンティティのひとつであり、未だに離れられない。上手く定義はできないけれども、今までにない男と女の関係を模索するジャンルだったのでは」と山田さん。

©日活
ふと、引き合いに出したのが三島有紀子監督の新作、千早茜原作の同名小説を映画化した松岡茉優、成田凌共演の『男ともだち』(11月6日公開予定)だった。ヒロインにとって、肉体関係を持たず大学時代から深く自分を理解してくれていた先輩と7年ぶりに再会する物語だが、試写で観て“ロマンポルノ的”だと感じ、そのことを三島監督に伝えると、彼女もまたロマンポルノのファンであっただけに、「とても嬉しい!」とのリアクションが。
ところで70〜80年代、大手他社も時に成人指定の映画に挑んだが、“ロマンポルノ的”な作品とはどう違うのか。山田さんはこう答えた。往年の「日活(無国籍)映画」と「ロマンポルノ」にはどこかDNA的に連続性があるのだと。それを山田さんは「日活モダニズム」と呼んだ。ロマンポルノへの移行前、旧体制での最後の青春映画『八月の濡れた砂』(71年/監:藤田敏八)のタイトルを付けたのは、師匠の佐々木企画部長だった。女性と海に行ったときに、砂浜から立ち上がったら座っていたあたりが海水で濡れていて、なぜか目を奪われた……「日活モダニズム」とは、このロマン志向のイメージ喚起力の強さとでも言おうか。

©日活
最後に、都築さんが「17年間で約1100本も生みだされ、まだまだいろんな掘り起こしができる。これまでは、昔からロマンポルノ好きな人による賛歌が多かったけれども、もはや当時生まれていない世代が大半を占め、今日も思いの外、若い方々が来てくださった。当特集を通して新しい視点でロマンポルノを観る試みが出来たら」と展望を――。
会場にはロマンポルノ最後の宣伝ウーマン、次回ゲストの早乙女朋子さん(小説家・映画ライター)が駆けつけていた。エロスを言葉にする専門家、著名な官能小説家だ。すでに発表があったが、第二弾のトークテーマは「嗚呼!ロマンポルノの言葉たち 惹句」とのこと。これは無論、(破茶滅茶な、でも無性に泣ける)ロック歌手役で内田裕也が登場する『嗚呼!おんなたち 猥歌』(81年/監:神代辰巳)へのオマージュである。

山田耕大さん(左)、早乙女朋子さん(右) 当時のスナップ
大道芸術館 × 日活ロマンポルノ トークショー第二弾「嗚呼!ロマンポルノの言葉たち 惹句(じゃっく)」9/26(土)17時~開催!

大道芸術館 × 日活ロマンポルノ トークショー 第二弾「嗚呼!ロマンポルノの言葉たち 惹句」
日時:9月26日(土)17時〜
出演:都築響一 × 早乙女朋子(ロマンポルノ最後の宣伝ウーマン/小説家/映画ライター)
入場料:4,000円(1D付き)
大道芸術館:墨田区向島5丁目28-4
お申込み:メールでお名前と参加人数をお知らせください。daidougeijutsukan@gmail.com
「大道芸術館 × 日活ロマンポルノ」Tシャツ、トークショー会場にて発売!

【ロングスリーブ スケバンマフィア】
カラー:パープルネイビー、シャロウグリーンの2色
サイズ:M、L、XL
販売価格:8,800円(税込)
トークショー会場にて9/26(土)より先行発売!

【ロングスリーブ ラスト・キャバレー】
カラー:スミクロ、ミルキーグレーの2色
サイズ:M、L、XL
販売価格:8,800円(税込)
トークショー会場にて9/26(土)より先行発売!

【にっかつロゴTシャツ】
カラー:白、黒の2色
サイズ:M、L、XL
販売価格:4,500円(税抜)
トークショー会場にて発売中!
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