Nikkatsu Visual Arts Academy
 
西東京映画祭2004・第3回自主制作映画コンペティション3位入賞!

三谷幸喜さんが朝日新聞の連載の中で『おそるべし種田陽平』という内容で種田さんを紹介していました。『冷静と情熱のあいだ』の中江監督も「種田さんはすごい」とおっしゃっていた事を思い出します。種田さんは《子供》と《大人》、《プロ》と《アマチュア》をいつでも自由に行き来していらっしゃるのではないでしょうか。楽しい事を見つけるのが大好きで、変幻自在な種田さん。世界をまたにかけて益々活躍される予感がします。これからも目が離せない方です。

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●映画との出会い
僕は20年以上この仕事をしていますが、気分はまだ皆さんに近いと思います。学生時代、最初にアルバイトでいった撮影所は、松竹の大船撮影所でした。その時は、とにかく楽しかったなぁ、と。その次が日活撮影所。当時、他の撮影所に行くよりもすごく緊張したのを覚えています。「やけにプロのスタッフが沢山いるなぁ」と感じたからです。正門が今とは別のところにあって…雰囲気はあの時とあまり変わっていないですよね。

今でも自分の中では、その最初の気持ちを忘れず《アマの精神》でいきたいと思っているところがあります。映画青年、映画少年の精神っていうのかな。仕事の中身は勿論プロでなければならないんですが (笑)。

僕は美大出身で、4年生ぐらいまで、わりとのんびり過ごしていました。油絵を専攻していたんですけれど‥油絵って基本的に《一人でやる作業》なんですよ。それで《映画研究会》に入って、《集団でものを作る楽しさ》を体感したんです。

中学時代も8ミリ映画を作ったりしましたし、高校では学園祭向けに戦争映画も作りました。大学ではSF映画。『スターウォーズ』とか『未知との遭遇』を "向こう" で作っているらしい、SF映画を若い監督たちが作っているというところに食い付いたんです。それで、よし僕らも、となり【美大に宇宙人が襲ってくる】という映画を作りました(笑)。

徹夜をして大学の構内をミニチュアで作って。大学が宇宙人に潰されて焼け野原になってゆくのを8ミリでコマ撮りしてね。実写でその宇宙人と戦うものを撮って合成した。それを秋の芸術祭で上映したんです。そしたら壊されてゆく大学に皆が喜んでね。潰されて閉校になるところで拍手喝采 (笑)。うけたなぁ、と。それが、日本テレビの深夜番組でも取り上げられました。今でもそこに自分の《映画美術の原点》がありますね。

●旅をしよう
当時は、貧乏学生で、油絵ばかり描いていました。だけど、学校に行くだけ、映画を作っているだけの生活では日常の世界が狭まってゆくんです。自分のリアルな環境と異なる世界を受け入れられなくなってしまう。

だから、映画をやりたい人は沢山《旅行》をするべきだと思いますね。国内でもほんの近場へでも、貧乏旅行でも海外旅行でも、出来るだけ時間を作って旅をした方がいい。特に若い時に。異空間の連続ですから。最近、旅の番組が多いですが、あれは《映像の嘘》ですよ。だから、実際に行って、自分だけのフランスとか沖縄を見つけた方が楽しいと思う。日常から離れて旅に出る。計画せずに迷い込んでみる。《感覚の自由な移動》や《道草》や《衝動的な旅》の中に

映画を作るための大切な何かがあると思うんです。後々、時間がなくなる時がきてしまうから。だから、今しか出来ない遊びの旅に出てほしい。その記憶の集積が必ず宝になる時が来るんです。【映画美術】を発見する視点もそこにあります。

それから《住宅街》を歩くのもおすすめですね。そこに《生活》があるから。住宅地は町自体が迷路のようで、均一じゃないですし、ヨーロッパなんかですと迷子になっちゃうようなところがあります。一回入ったら出口のないような設定が映画に合っているんです。だから今のうちに見知らぬ街をどんどん歩いてほしいですね。それから皆さん、怪しまれない程度に写真を撮るといいと思います(笑)。10年経つと町は変わってしまう。撮って残しておかないと将来取り返しのつかない事になる場合もあります。

『ロケハン』は「面白いところないかな」とあちこちにいく事なんですね。「面白い」と思えるか、ボーと見過ごすかで見えてくるものも違ってくると思います。「イメージ通りの場所がない」とモチベーションが落ちる時もある。だけど「イメージ通りじゃない」という事に興味が移ってゆく人もいるんですよ。台本では《川》だったけど《沼》の方が面白いなぁとか、《村》の設定だったけれど、《新興住宅地》の方がいいね、とか。発想の転換。それを面白いと思う監督は基本的に子供みたいな監督が多い。才能のある監督は子供のようになって盛り上がりますね。

【何処かに行ってワクワクドキドキすること】そこから全てが始まるんです。僕はいつも日常を見た事もない空間にしたいという気持ちがあります。普段の生活の中に《旅》を見つけられる人は何でも楽しめると思う。何処かに行って、何かを発見する【ワクワクドキドキする経験】が出来ないと映画作りは面白くない。監督やキャメラマンと何かを発見する喜びを分かち合う。「映画を発見したい、何か新しいものを掴みたい」という気持ちかな。

ロケハン写真の撮り方で、その人の映画的センスが感じられることもあります。みんな撮るポイント、切り取り方が違う。カメラマンはカメラマンの、監督は監督の、そして美術は美術の。それが逆に面白い。空間って、複雑多岐なものなんですね。

それから良い場所を見つけたら、素直に喜べること、感情を表現出来るという事も大切だと思います。映画ってアイデア合戦みたいなところがある。十人十色でアイデアを出し合う。勿論、人と人だから相性もあるし、合う合わないという事もある。だけど、どんな時も《遊びに近い感覚》を忘れないようにしてほしいですね。

『場所探し』には二つの意味があるのを知っていますか。一つは《撮影の為の場所を探す》こと、もう一つは《イメージハンティングをする》という事です。台本や原作のアイデアを絞り出すためのもので、その時に一人旅での発見が大切になるんです。

それをこの2年間の学生の間に練習した方がいい。誰も教えてくれないから。これはプロになってからも繰り返す事です。

僕は地方ロケでは出来るだけスタッフとは別行動をするようにしています。映画は集団作業なので、たまには一人になってみる。電車で一人で帰るとか、車で違う道を通って帰ってみるとか。『自主ロケハン』とか言いながら、駅の周りを散策したり、汚い食堂でご飯を食べてみたり、各駅で帰ってみたり。降りた事もない駅で降りてみる楽しみもありますし。出来るだけ色んな駅、商店街、住宅街を歩いてみます。

●セット美術について
最近有名な表参道ヒルズは確か安藤忠雄さんがデザインしたものだと思います。直線的でガラス張りの均一な空間が作られています。でも、これは映画としては使いにくいところがある。愛憎劇は撮りにくい(笑)。観念的にみえるからでしょうかね。例えば高速道路もまっすぐだとつまらなくて、寝ちゃいますよね。それと同じようにカーブがあったり、起伏と変化する空間が映画にも必要です。

これはタランティーノ監督の『キル・ビル』の《東京バー》のセットです。デザインは僕、セットを中国人が建てて、アメリカ人が撮影しています。北京撮影所で撮りました。ちょっと複雑ですね。(笑)東京にはアイリッシュパブやイングリッシュパブ、ニューヨーク風のバーはあるけれど、東京風の《東京バー》は、ないんですよね。そこで一度、東京を離れて考えてみることになります。それが、《旅すること》と会い通じるところです。

普通、役の設定で日本人が隠れるんだったら、信州の山奥とかで蕎麦屋か陶芸をしているとか、僕ら日本人の一般的な考え方ですよね。だけど、タランティーノ監督は日本が好きな外国人で、《外からの旅の視点》で見ているわけです。だから刀つくりの名人を《沖縄の寿司バー》に隠す事にした。沖縄にしたのも「オキナーワ」っていう発音がカッコイイからですし(笑)。この寿司バーも入り口は沖縄の建築に沿って作られていますが、実は、メキシコ風にもなっています。メキシコってこうかな、と。ここでも旅に出た気分から始まっています。監督が映画に雪のシーンを入れたのも、《雪》を日本で初めて見て、この景色の中で撮りたいという発想から生まれたんです。それから台湾のホラー映画『Guisi(Silk)』もやりました。江口洋介さんなども出ているので、日本でも公開になったら観ていただく事ができると思います。台湾の団地が幽霊屋敷の設定で。その床を台湾様式のタイル張りにしました。そこにキューバの様式も混ぜた。‥同じ暑い国とですし、僕がキューバに行ってみたいからでもあるんです(笑)。

こんな風に映画の空間には《表と裏》があります。《本物と嘘》《現実とファンタジー》《再現とフィクション》。全て同じところで撮ったように見えますが、実は違う。黒澤明の『用心棒』だって、嘘がいっぱいで歴史に沿った事実通りじゃない。宿場といってもあんなに道幅は広くなかったでしょうし、家の様式も江戸風を装いながら、北関東とか信州の様式が混ざっています。『七人の侍』だって全部で7箇所ぐらいで撮って組み合わせているんですよ。上からみた村、村の中央からみたところ、水車小屋のある地点からの村、坂道の入り口のところの村と全て別々のところで撮っていて、それで一つの村が出来ているんです。そう思うと「旅の集積によって映画は出来てるんだなぁ」と思いますよね。そんな風に《嘘を作り出す事に対する積極性》を忘れないでほしい。そういう中に《映画美術の謎と本質》があるんですね。モザイクのようにして出来た映画空間を目指してほしい。角を曲がったら全然違うところに出ていていいんです。あとは与えられた日数やお金、条件の中でイメージを集積して作るようにするだけです。

●若い人たちへ
《映画の歴史を知ろうよ》という事も伝えたいですね。教科書的なものじゃなくていい。自分のお気に入りの映画の歴史だけでいいんです。今、キネマ旬報で美術監督の若手の視点ということで僕が木村威夫先生や黒澤映画の美術監督の村木与四郎さんにインタビューしているものが連載されています。よかったら是非読んでくださいね。


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