作品テーマ ウワサ 2007年10月
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■PROFILE

越川 幸子
Yukiko koshikawa


日活芸術学院 映像科1年
愛知県出身

毎日新しい事を学んでいます。
難しいけれど面白いです。


 ある小さな村にタカシという七歳の男の子が住んでいた。タカシの家はその村では大きな方で、お金持ちの一人息子として大切に育てられていた。
 ある日の夕方、いつもの様に友達数人と遊んでいると、一人遅れてやって来た友人が重大ニュースだと皆を集めた。そして裏山を指差すと少し声をひそめて
「あの山にある古い小屋には、人喰いの山姥がいるらしい」
と告げた。
 少年たちはざわめいた。
「この間木を切りに山に入った人が偶然その小屋の前に出てしまい、何気なくその小屋をのぞくと、山姥が一人大きな刃物を研いでいた。目が追うと、その刃物をもって襲いかかってきて、後一歩逃げるのが遅れていたら喰われていた。なにしろ、その山姥の歯はひどくとがっていたんだと。命からがら逃げかえったけど、その人は高熱に浮かされて、危うく死んでしまいそうになったんだと」
 タカシは他の子達より少し大人びていて落ち着いたところがあったから、普段ならそんな話簡単には信じなかったけれど、今回は少し気になって耳を傾けた。それというのもタカシ自身つい先日母から「真面目に聴きなさいよ」と呼ばれ、「裏山の小屋には絶対に近付いてはいけない」と言われていたからだ。その時タカシは母に理由を尋ねたけれど、母は一瞬戸惑ったような表情を浮かべて、「分かったわね」と念押しだけしてそれ以上語ろうとしなかった。
 タカシがその時の事を思い出しているうちに、他の少年たちの間で早速山小屋を探しにいこうという事で話がまとまっていた。タカシは気が進まなかったが、弱虫と思われたくなかったし、多数決での負けは目に見えていたから口出ししなかった。
 皆は石や枝などで可能な限りの武装をし、山に入った。
 「本当にそんなものが居るのだろうか」
 タカシは山姥のことを考えていた。皆が先に歩いていき、タカシは石を蹴りながら後に続いた。タカシの頭の中には母の話や、今聞いたばかりの話が渦巻いていた。ふとタカシは周りに物音がしないことに気がついた。
 顔を上げると誰も居ない。一人きりだ。この山の中で皆とはぐれてしまったのだ。
 背の高い木々に囲まれ、タカシまで日の光が届いてこない。タカシの中に恐怖が一気に押し寄せてきた。来た道を戻ろうと思っても考え事をしていたタカシには、どっちに進めば良いのか検討もつかない。 
今山姥に見つかったらひとたまりも無い。さっきまでの自分が嘘のように今のタカシは山姥の存在を信じきっていた。
 (どうしよう・・・)
 気持ちが焦る。泣き出しそうになるのを必死に堪えながらタカシは山の中を彷徨った。西の空に日が落ちていく。シャツ一枚のタカシは寒さと心細さでおかしくなりそうだった。
 木をかきわけてタカシは歩いた。すると、ポッカリとひらけた場所に出た。同時にタカシは恐怖のあまり凍りついた。そこには古い山小屋が建ち、中から山姥がちょうど出てきたところだったのだ。そして立ちすくむタカシと山姥の目が合った。山姥は右手に大きな刃物を持っていた。


 
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