| ≫「橋とネコとインスタントラーメン」 千葉麻衣子 |
| そのネコは橋の真ん中に置かれた椅子にぴょこんと座っていた。ネコの名はマーちゃん。生き別れた母ネコを毎日待っているという。それを教えてくれたのは、マーちゃんと一緒に暮らすホームレスのおじさん。父母の喧嘩が絶えない家に帰りそびれていると、おじさんはマサルにインスタントラーメンをおごってくれた。欠けた茶碗で食べるそのおいしさ、暖かさ。失ってはいけないものの大切さを知ったマサルは、ある日ついに…。家族の絆をとりもどそうとする少年のけなげさが真っすぐに描かれている好篇。(斉藤) |
| ≫「ツリバシTRIP」 宮本明美 |
| 「あの吊り橋を渡れば、俺は自由〜だァ!」 裸足で林の中を駆けるミツルの眼は飛んでいる。そう、ミツルは脱走中。クスリに溺れて叩き込まれた矯正施設から逃げ出してきたのだ。モウロウとした頭の中で、両親にはさまれて宙返りしながら渡った吊り橋の記憶が蘇る。が、いきなり思い出がでんぐり返った。バリバリバリッ! ミツルの足が腐った橋桁を三枚突き破ったのだ──。“走る作家”宮本の発芽がここにある。(斉藤) |
| ≫「Good Morning」 中村明子 |
| しし座流星群。33年に一度の流星の夜…。「いつか大人になったら、三人で一緒に校庭のコンクリート山で星のシャワーを浴びよう」 そう誓い合った陽介は、もうこの世にいない。親友を失った過去から、惹かれあいながらも避けあう千夜子とハルオ。そんなハルオが留学すると知った夜、テレビがしし座流星群のおとずれを告げた…。10年の時を越え、校庭のコンクリートの山で手をつなぎあう千夜子とハルオ。「流星の夜」が明けていくラストが胸をうつ。(斉藤) |
| ≫「釣り語り」 星野利幸 |
| 有能な建築技師だった山本は、ある日社長と妻から死んでくれと頼まれる。会社ぐるみの贈賄がばれ、一気に経営が傾いてしまったのだと言う。妻は社長の娘で、入り婿の山本にもいつのまにか代表取締役の役名がついていた。息子のためにお願いと頭を下げられ、山本はフラフラと橋の上に来てしまった。その橋は山本が精魂こめて造り上げた自慢の橋で、妻との出会いもその開通式でのことだった…。(斉藤) |
| ≫「ブリッジマン」 金川友美 |
| 男の名は田口良夫。通称ブリッジマン。橋の下に住んでいるホームレス。髪も髭も伸び放題で、おまけに悪臭がすごくて誰も寄りつかない。そんな良夫が、ふとしたことからいじめられっ子を助けてしまう。「おじさんは、正義のブリッジマンだよ」 それ以来自分のまわりから離れない少年とつきあううちに、忘れようとして忘れられない過去が蘇る。良夫は妻と息子を捨てて家出していたのだった…。緑の長靴、大リーグの帽子。小さな小道具が生きた佳作。(斉藤) |
| ≫「橋」 中村理恵子 |
| あの川の橋の下。 昨日からそこが弟の家になった。 理由はわからない。
体育座りをして じっと対岸をみつめている。 「ねえ、見つけて欲しくないんなら。もう少し工夫してよね」 私は次の日の朝
弁当を作って橋へ行った。 そっと弟のそばに置く。 「もう、いい加減帰ってきたら。悩み があるわけ?」 自分で質問していながら 「悩み」という言葉に後ろめたさを感じて どもってしまった。 そして ある日 弟は川の中に姿を消した…。バツイチ女性の傷ついた深層心理が織りだす不可思議ワールド。(斉藤) |