大好評全国巡回上映中の日活創立100周年記念特別企画 “生きつづけるロマンポルノ” @横浜シネマジャック&ベティ(~7/27まで上映中)でのトークイベントに、ジャーナリストの山路徹氏とノンフィクション作家の亀山早苗氏が登場!大人なおふたりが語るロマンポルノとは?
山路 僕はロマンポルノを観るのが初めてでしたので、今回この作品を観ることが出来て本当に嬉しく思っています。というのは、映画1本1本がやはり作品だなと思いまして。そのあたりを後でまた詳しくお話させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
亀山 自称フリーライターの亀山です。最近、“自称” と言うのが怪しくていいかなと思って(笑)。よろしくお願いします。
山路 亀山さんから今回のお話をいただいたのですが、私は現在50歳で、今までロマンポルノを観たことがないんですよね。それは何故かと考えると、僕らの世代は70年安保や学生運動からバブルに向かって世の中が変わっていく時代で、体制と反体制というものが明確に分かれていました。その中で、ロマンポルノというのは社会に対するある種の強いメッセージと言いますか、反体制のメッセージのシンボルだったんですよね。ロマンポルノを当時観ていた人と観てない人は、まさにその時代でハッキリと分かれているんですよ。ところで、亀山さんはずっとご覧になっていたんですか?
亀山 ロマンポルノが始まったのは1971年ですよね?当時はまだ11歳なので(笑)、最初の頃は観ていないんです。観始めたのは20歳くらいかな。最初は大学の友達と一緒に行ったんだと思います。当時は池袋に日活直営の映画館があって、そのうちそこへひとりでぶらっと行ったりしたのが1980年代ですね。
山路 そもそもロマンポルノを何故ひとりで観に行ったんですか?
亀山 エロいのが好きだったんでしょうね(笑)。でも、アダルトビデオには情緒がなくピンと来ないのですが、ロマンポルノには圧倒的な映像の力がありました。それで80年代初期に観たロマンポルノが忘れられなくて。
山路 ロマンポルノがそろそろ衰退してきた80年代半ば、僕は「青春の日本列島」という30分ドキュメンタリーテレビ番組を作っていました。当時僕は24、5歳の最年少監督で、崔洋一監督や柳町光男監督などもいました。1本のギャラはそこそこ良かった代わりに、撮影期間は3日。経費として使えるのは5万円。30分番組で貰えるフィルムはその3倍分だけという制約の中で作らなくてはなりませんでしたが、制約が厳しい分アイデアや知恵を絞って作っていました。そういう部分で、ロマンポルノに同じにおいを感じましたね。僕は、実は映画監督になりたかったんです。才能がないからドキュメンタリーや報道の世界でやってきましたが。ところで、映画ってある意味監督の排泄物だと思うんです。
亀山 排泄物!?
山路 特に、ロマンポルノのように裸の女性を演出するのは、ものすごく難しいことですよね。服を着た芝居であれば、セリフでねじ伏せていくことが出来るけれど、裸の女性を演出するということは、まさに監督自身の女性観がそこに映し出されていくわけですから。この作品(『一条さゆり 濡れた欲情』)を観ると、神代監督がどんな女性観を持っていたのかや、きっとすごくモテた人なんだろうなと言うのが分かります。
亀山 似たものを感じますか?
山路 そんなことは恐れ多くて言えませんが(笑)、今ならロマンポルノを撮れる気がします。
亀山 山路さんは、「ロマンポルノな日々」を送っていらしゃるとか(笑)。
山路 PRチラシを見てビックリしました!「ロマンポルノな実生活を送り・・・」って(笑)。話を戻しますと、洋服を着た芝居の演出は、若い監督でも出来るんですよ。ところが裸を演出するとなると、自分の女性観がみんなそこに映し出されますから、若いと恥ずかしくて出来ないというか・・・。
亀山 それで、今なら出来ると?
山路 今回刺激を受けまして、本当に撮りたいと思っています。
亀山 裸だからというだけでなく、やはり圧倒的な映像の力がありますよね。
山路 ロマンポルノは、予算はないけれど「濡れ場さえあれば好きに作っていい」という中で作ったから、ものすごく優秀な監督がここから輩出されていますよね。その中のひとり村川透監督が撮った『野獣死すべし』のストリップの場面は、神代監督の『一条さゆり 濡れた欲情』に通じるものがありますね。
亀山 村川監督の日活ロマンポルノデビュー作は『白い指の戯れ』という作品で、その共同脚本が神代さんなんです。
山路 だからものすごく通じるDNAみたいなものを感じるんですね!たぶん村川監督も、相当おモテになった方だったと思います。
亀山 監督はモテないとダメですか?
山路 モテないような監督が撮った映画を観て、面白いわけないですもの!つまり、視聴者をくどけない人がモテるわけないですし、モテなければ女性のことは分からないから撮れない。今回の映画でもそうですが、女性は時にしたたかで、あざといよね。
亀山 ものすごく女の本質を見抜いていますよね?
山路 そう!女の本質というものがものすごく出ていて、一方で男というものの単純さもすごく描かれている。それって、服を着たままじゃやはり中々伝えられないものがあってね。だからロマンポルノというのはそういった意味では、ものすごく奥深い部分を伝えている。だからこそ監督には力量が求められるんでしょうね。
亀山 結局主役はいつも女で、結局いつも生き抜いていく・・・みたいなところが私はすごく好きで、女とはそういうものだと思うんです。それを「守ってあげたい」と言ってしまう男はかわいそう(笑)。
山路 ロマンポルノというのは、男にとっては女性を知る上でのバイブルだと思いますね。数々のモテる監督たちが自分の女性観をそこにぶつけて演出しているわけですから、そこに学ぶべき点が多いのは当たり前だと思います。これからの時代こういうものを作るのは大変難しいかもしれませんが、これは財産。本当はもっともっとこういう映画を観る機会を増やしてほしいなと思います。ところで、女性からみたロマンポルノというのは、どんな感じなんですか?
亀山 出てくる女性に、ある種自己投影みたいなのをしますよね。女のイヤらしいところ、というか本質が自分にもあるんだろうなと思います。
山路 だからすごくリアルなんですよね。綺麗事はひとつもないじゃないですか。トレンディドラマでは、ラブシーンで「愛してる」と言いますが、僕はそこにリアリティを全く感じないんです。「愛してる」ほど世界をぶち壊してしまう言葉はないですよ。この映画の中で面白いのは、「愛してる」なんて言葉ではなく、「私は孤児院育ちで、お父さんは死刑囚だったの」という言葉に男が燃えてしまうところ。まぁ、今時の男性はどうか分からないけど、でもやはりエロティシズムってそういう部分を言うのではないかと。
亀山 劣情を刺激する、とか言いますよね。よく「一緒に成長する恋愛」なんて言うじゃないですか?あれもすごく嘘っぽいなと思って。一緒に堕ちるなら分かるんですけど(笑)。
山路 そうなんですよね。だって、恋って愚かになることですからね。
亀山 それが、ロマンポルノにはあるんですよ。
山路 僕はそこにすごくリアリティを感じるし、共感もする。しかもそれを作品として作り上げていくところに、監督の作家性、芸術性というものがある。思う存分予算はないけれども、裸さえ出てくれば何でも出来た。そういう場があると、そこで勝負出来るし、勝負していく中で磨かれる。逆に言うと、失敗も出来る。失敗するではなく、失敗も出来るという感覚ですよね。その環境がなくなり、今は新しい監督に何か撮らせるとなると、平均点のものを作るためによってたかって周りが作り上げてしまい、結局その監督が作りたいものなんか出来ない。今の若手監督はかわいそうですよ。今の時代背景を考えるとこういった作品作りは難しいかもしれませんが、出来上がった財産は何とか大切にしてほしいし、女性に観てほしいなと思います。ロマンポルノというと男の世界だと感じてしまう人が多いかもしれませんが、本当に素晴らしい芸術性、作家性をもつ作品です。
亀山 ロマンポルノを女性にすすめると、みんな誤解していて「男が女をオモチャにしているんでしょ?」みたいなことをよく言うのですが、全然そうじゃないですよね。
山路 逆だもんね。
亀山 そうですね(笑)。
山路 これはだからね、経験した人にしか分からないですよ(笑)。そういった意味で、今だったら僕はロマンポルノ撮れますよ。もう日活さんは作らないかもしれませんが、自主制作でもいいから作りたい。亀山さんにもちょこっと出てもらって。
亀山 尽くす男に、したたかな女(笑)?ところで、私が一番好きな作品は神代監督の『赫い髪の女』という作品なのですが、石橋蓮司さんと宮下順子さんがワケ分からない知り合い方をして、ワケ分からないまま一緒に暮らし始め、真っ当な会話もないんですよ。でも、男女ってこれでいいんだよなって、つくづく思うんです。
山路 それがリアルなんですよ。無理して会話を作ろうとしない。
亀山 横浜シネマジャック&ベティでもまだ上映しますので、ぜひ観ていただきたいなと思います。(7/21、23、25日に上映)
山路 長々とお話してきましたが最後に再度お伝えしておきたいのは、ロマンポルノって、持っているイメージとは裏腹に、そこにものすごく芸術性、作家性というものが発揮されていて、それはむしろロマンポルノの中でしか見えないもので、僕はこの機会に多くの人たちにこのロマンポルノを改めて観ていただきたいなと思います。カップルの人はカップルで観に来たらいいと思いますし、女性同士で観に来てもいいし。
亀山 で、帰りには遊園地で、ぜひ・・・。捕まりますけどね(笑)。
山路 ロマンポルノはギリギリの演出がたくさんありましたから、当時摘発されることもあったんですよね。それはある種、時代体制と戦う象徴であって、だからこそそこに監督や映像制作の技術が集まったという時代背景があったんですよね。そういったことも含めて観ていただくと、ものすごく奥深さを感じると思うので、ぜひご覧いただきたいなと思います。
© 日活
★★横浜の次は大阪!7/28(土)~テアトル梅田で上映スタート★★
日活創立100周年記念 特別企画
蓮實重彦、山田宏一、山根貞男が選ぶ愛の革命
生きつづけるロマンポルノ
★全国巡回上映中!9/8より渋谷ユーロスペースにてアンコール上映決定!★
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