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映画『まく子』公開直前トークイベントに鶴岡慧子監督とともに登壇した漫画家・羽賀翔一さんが、主演・山﨑光さんと草彅剛さんの演技を絶賛!
2019年02月25日(月曜日)

幅広い世代から愛される、西加奈子氏の世界観を感動作として見事に昇華させ、いよいよ来月3/15(金)テアトル新宿ほか全国公開される映画『まく子』の公開直前トークイベントが、2/23(土)池袋コミュニティカレッジで行われました。

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本作は、西氏が第152回直木賞受賞後の第一作目として書き下ろし、児童小説では異例の累計55,000部の売り上げを記録した同名小説が原作で、公開をおよそ1か月後に控えた2/12には文庫版が刊行。思春期の主人公・サトシの葛藤と、不思議な魅力をもつ美少女コズエとのせつない初恋を軸に描く《再生と感動》の物語です。

公開記念イベントには、210万部を突破した大ベストセラー「漫画 君たちはどう生きるか」の作者・羽賀翔一さんと、本作のメガホンをとった鶴岡慧子監督が登壇。

時代を超えて読み継がれてきた児童文学者・吉野源三郎氏の名著を漫画化した羽賀さんと、直木賞作家・西加奈子氏による初の児童小説を映像化した鶴岡監督。ともに思春期の子どもたちの迷いと成長を描き、幅広い世代の共感を呼ぶ作品を手掛けられたお二人に、原作へのアプローチ方法や、表現者としてのこだわり等たっぷりと語っていただきました。

― 映画を鑑賞して

羽賀さんは「ハッとするものとホッとするものが同居し、自分たちが子供の頃に感じていた気持ちや風景が混ざっていて、リアリティを失わないギリギリのところで作られている点にとても共感しました。自分が目指したいものと似ているとも思いましたね」と、本作の魅力を語りました。

さらに「山﨑光くんが演じた主人公・サトシは素朴さもありながら、内面に怒りを秘めていますよね。ふつふつと怒っている。その矛先がうまく定まらない感じが、すごくリアルでしたね。いわゆる子供ではなく、子供と大人の両面を行き来きし、境界線をまたぐ両方が混ざり合う感じが、この作品にピッタリでした。また草彅剛さんが演じていたお父さんも、まるっきりダメな親父ではなく、良いお父さんと混じりあっている。人間って良い面と悪い面とを行き来しながら生きていると思うのですが、そのバランスが絶妙でしたね」と主演の山﨑さん、そして草彅さんの演技を絶賛しました。

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©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)


― 映画監督、漫画家のキャラクターの作り方、伝え方とは?

鶴岡監督は「原作があるとゼロからのスタートではないですが、映像で具体化していくことをしなければいけないので、キャラクターは綿密に作らなければいけないと思いました。西加奈子さんの原作の突飛さが好きで、物語的にもその面白さは大事にしました。

原作のサトシはうだつが上がらず、クラスでもあまり目立たず、常に一歩引いたところから見ている傍観者で、自ら物語を動かしていくタイプではないので主人公にしづらい点では苦労しましたが、そういったサトシの立ち位置は守りつつ、サトシが抱える"大人になりたくない"といった思春期の混乱や、初恋をまだ恋とは捉えきれていない感情など、サトシを演じる山﨑くんと一緒に話し合いながら作り上げていきました」と、述懐。

対して羽賀さんは、自身の漫画に出てくるキャラクターについて「僕の場合は想像ではなく、自身の経験や身の回りにいる人をうまくミックスさせながら作っていることが多いです。『漫画 君たちはどう生きるか』も原作から変えたキャラクターやシーンがいくつかあり、それは自分の経験を演出として使っているところがあります。

例えば、(主人公コペル君の同級生)浦川君のキャラクターで"家が貧しい"という設定を小説では1ページで説明しているのですが、漫画では1コマ2コマの一瞬で読者に理解してもらわなければならず"どういう表現をしたら浦川君のバックボーンが伝わるか?"と考えたときに、僕が学生の頃ノートに字をキチキチに書いている同級生がいて、その理由を"何冊もノートを買えないから"と言われ、とてもハッとしたんです。その経験を漫画の中で使ったら、読者の方も同じような気持ちになってくれると思いました。

全く自分が見ても感じてもないことを描こうとすると薄っぺらいものになり、情報の密度が弱くなってしまいます。僕は1ページの中で表現できる情報量を増やしていくことが、人を描くときには大事な作業だと思っています。削ぎ落とすことが情報量を増やすことだと思っていて、10考えていることをそのまま10描くのではなく、10考えていることをどうやったら1とか2で伝えられるかと思いながらやっています」と、漫画ならではの"伝え方"について明かしました。

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― 創作するうえで大事にしていることについて

羽賀さんは「僕はとても画が上手いわけではないので、読みやすさや少ない言葉で、小石なんだけど池に投げた時に波紋が広がるような作品が生命線だと思っています。画が挿絵にならないよう、画と言葉が互いに連動し合っていることを意識して描いていますね」と。

続けて「実は、現在も『宇宙兄弟』の小山宙哉先生のアシスタントをしています。以前、テーマを決めて自撮りで撮影した写真を見せ合い、誰が一番似ているかを競う【なりきり写真大会】をやっていました(笑)。小山先生からは"これも漫画の勉強なんだよ"と(笑)。それは、漫画はキャラクターが出てきた瞬間に、読者がその属性を分からないといけないため、その見せ方を写真で撮れるようになるということは、画でも描けるようになるということなんです。そして、小山先生は圧倒的にうまかったです。漫画家もある種役者で、自分で芝居しながら描いているんだなと思いましたね」と、小山先生独自の"キャラクターを画で見せる学び方"について披露。

鶴岡監督も「"なりきり"の話は映画でも同じで、役者がスクリーンに出てきた瞬間に、そのキャラクターが分からないといけないんですよね。セリフで説明せず、画面だけで予感させるところが映画ですよね。悪役も悪いだけじゃなく"この後に何かあるのかな?"と、役者の佇まいや撮り方で伝わるんです。良い映画は一発で伝えることが究極だし、基本だと思っています」と、映画での見せ方の重要性について話しました。

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― 漫画、映画それぞれの表現方法について

羽賀さんは「僕は、原作の力が凄くあったので『漫画 君たちはどう生きるか』は翻訳仕事という感覚があり、漫画も一つの言語として捉えられたらいいなと思っています。文章だけだったものに漫画という言語を足すことによって、より伝わりやすく、短い時間でたくさんの情報を伝える手段になります。漫画が娯楽ということだけではなく、英語だったものを日本語にするように、文章だったものを漫画で表現したりして、もっと漫画の可能性を広げてもいいんじゃないかと感じています」と。

一方、幅広い世代から愛されている原作を映画化することについて、鶴岡監督は「西加奈子さんの作品がもっている物の見方、考え方に私自身がとても勇気づけられているので、その力はそのまま映画『まく子』に落とし込まないと、という使命感がありました。西さんの作品は、すべてのキャラクターが同じ地平に立っていて、個人が個で存在しているからこそフェアで、どの作品でも貫かれている魅力でもあるので、映画も必ずそこは伝えたいと思っていました」と、話しました。

同世代でもある鶴岡監督と羽賀さんは、映画と漫画でジャンルは違えど共通する部分も多く、終始和やかな雰囲気でトークが進行。最後はお客様との質疑応答も実施し、イベントは終了しました。

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かけがえのない"あの頃"に涙する-。
今を生きる大人たちへ贈る再生と感動の物語『まく子』に、ご期待ください!


映画『まく子』2019/3/15(金)テアトル新宿ほか全国公開!


物語
ひなびた温泉街の旅館の息子・サトシは、小学5年生。自分の体の変化に悩み、女好きの父親に反感を抱いていた。ある日、美しい少女コズエが転入してくる。言動がどこか不思議なコズエに最初は困惑していたサトシだったが、次第に彼女に魅せられていく。そして「ある星から来たの。」と信じがたい秘密を打ち明けられる。枯葉や紙の花を楽しそうにまくコズエが、やがて町の人々みんなにまいたものとは...。

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©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)


映画『まく子』関連ニュース

完成披露上映会の模様
著名人たちから絶賛コメント到着
予告篇解禁
厚労省とコラボ
ポスタービジュアル解禁
主題歌決定
追加キャスト解禁
特報完成
第1弾チラシ&場面写真解禁
映画化決定


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『まく子』

★2019年3月15日(金)全国公開★

直木賞作家・西加奈子の傑作、ついに映画化

監督・脚本:鶴岡慧子

原作:西加奈子(「まく子」福音館書店刊)

出演:山﨑光 新音 須藤理彩/草彅 剛

©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)



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