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日活創立100周年記念特別企画 “生きつづけるロマンポルノ” 初日に曾根中生監督が登場!
2012年05月12日(土曜日)

日活創立100周年記念特別企画 “生きつづけるロマンポルノ” が初日を迎え、『(秘)女郎市場』 上映後に曾根中生監督によるトークショーが行われました。

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1971年に製作を開始した日活ロマンポルノは、1988年までの17年間、様々な女性の美しさを描き、日本映画史とたくさんの観客の記憶に残る作品を残しています。この日活創立100周年記念特別企画 “生きつづけるロマンポルノ” では、リアルタイムで作品に接し、批評し続けてきた蓮實重彦氏、山田宏一氏、山根貞男氏を選者に迎え、約1100作品の中から “今、観るべき 日活ロマンポルノ” 32作品を厳選。さらに観客の投票による1作品と劇場未公開の 『白昼の女狩り』 を加えた計34作品を一挙上映します。

その記念すべき初日に、80年代後半に消息を絶って以来長年に渡って行方が分からずにいた曾根中生監督が、映画評論家の山根貞男氏とともに登場!当時を振り返り、山根氏も初めて知る裏話など楽しいトークが繰り広げられました。

山根 曾根監督は映画監督として20年程活躍なさった後1988年の映画を最後に突然映画界から姿を消し、そして去年突然現れたわけですが、折りしも日活が創立100周年ということで、記念イベントのひとつであるロマンポルノ特集上映の初日にこうしてお客様の前に姿を現しました。

曾根監督 大震災がなければ、出てこなかったと思います。今は映画と全く別のことをやっているのですが、それが震災に役立てばと思ってひょっこり顔を出したわけです。ところがそれが天命というか運命というか、ちょうど日活100周年ということで皆さんの前にノコノコと挨拶に来ました。何だかすごく恥ずかしいし、嬉しいです。

山根 今上映した 『(秘)女郎市場』 は1972年の映画ですが、曾根監督が助監督として日活に入られたのは1962年(昭和37年)頃でしたかね?

曾根監督 たしかそれくらいですね。

山根 助監督とし10年くらい経ったところで日活がロマンポルノ路線に切り替わり、その直後に監督としてデビューなさったんですよね?

曾根監督 大作映画には助監督が4人付きますが、私はつねに一番下っ端のフォースだったんです。ところがいきなり監督になったため、私の下につく助監督がいなくて、助監督もカメラマンも誰も彼もみんなベテランで、何だかいじめられているような感覚でした(笑)。

山根 フォースをずっとやってきて、何故いきなり監督に?

曾根監督 私は、皆さんご存知の鈴木清順監督の下でずっと助監督をやっていたのですが、私が脚本を書いた 『殺しの烙印』 で鈴木さんがクビになってしまったんです。そうしたら、誰も助監督として使ってくれなくなってしまいました。ちょうどその頃 「大江戸捜査網」 というテレビの時代劇の仕事が入ってきて、テレビの助監督をやることになったのです。それで、日活がロマンポルノに路線変更した時に、“「大江戸捜査網」 をやっていたのだから時代劇をやってみてくれ” ということで、時代劇の監督になったわけです。

山根 そうだったのですか!何故いきなり監督になられたのかな?と前から思っていたのですが、時代劇で繋がっていたのですね!曾根監督のデビュー作は 『色暦女浮世絵師』 という映画ですが、先ほど上映した 『(秘)女郎市場』 は曾根監督の6作目で、デビュー作から6本目まで全部時代劇なんですね。途中2本は正確には時代劇とは言えませんが、任侠もので昭和初期の話ですから時代劇のようなものです。日活ロマンポルノというと、あまり知らない人のイメージでは団地妻シリーズが有名ですが、実は初期は時代劇がいっぱいあったんですよね。

曾根監督 そうですね。大奥ものとか。現代劇よりも時代劇向きの女優さんがいたので私もその女優さんを撮ったのですが、どうも私はポルノを撮るのがヘタなんですよね。ですから多分 『(秘)女郎市場』 を観ても、さっぱりポルノチックじゃないと思われると思うんです。よく撮らせたなと今でも思います(笑)。

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山根 でも、時代劇を撮るのは面白かったのではないですか?

曾根監督 江戸時代に関して無知なものだから、何でもアリだと思って何でもやっちゃったワケですよ。なので何てバカなヤツだと思って、おおいに笑ってください(笑)。

山根  『(秘)女郎市場』 は、その後鈴木清順監督の 『ツィゴイネルワイゼン』 や相米慎二監督の作品など色々と面白い作品を作っている田中陽造さんという方が脚本家なのですが、ロマンポルノからスタートされたんですね。ロマンポルノはセックスシーンさえあれば何をやっても良かったので 『(秘)女郎市場』 のようなドタバタものも作ることが出来、面白い作品をつくる腕があがっていったのだと思いますね。

曾根監督 先ほど話に出た鈴木清順監督の 『殺しの烙印』 という作品は、田中陽造さんの他に大和屋竺さんという方と私の3人で書いたのですが、鈴木さんのクビで実現しませんでしたが 『続・殺しの烙印』 も書いていたんです。『殺しの烙印』 は調布の旅館で書いていて、朝になると鈴木さんが来てチェックするので、おっかなくて何か書いておかなきゃと思って書くワケですが、続編は伊香保の旅館に1週間3人で泊まり込んで、1行も書かずに帰って来ました(お客様爆笑)。伊香保には鈴木さんがチェックに来ないから、酒呑んじゃうんですよ(笑)。そんなバカなことやって何も書かずに帰って来てから、泡食って3日程で何とか書いて鈴木さんのところへ持っていったら「ダメだ」 という一言で書き直し(笑)。

山根 ということは、撮るつもりで動いていたんですね?!

曾根監督 そうです。『殺しの烙印』 は、試写室ではすごく評判が良かったので、“これは大入りだろうな!” と思っていたのですが、劇場に行ったらお客さんがほとんど・・・(満席の場内を見渡して)今日は皆さんありがとうございます(お客様爆笑)。

山根 しかしあの映画は、何が起こっているのかよく分からん。宍戸錠さんが何をしているのか分からない。というのが面白さなんだと思うんですよ。それが鈴木清順監督の腕前だと思うのですが、今の話を聞くと、それと同じように 『(秘)女郎市場』 がその時の田中陽造、曾根中生のコンビが撮っている映画だというのは納得出来ますよ。あんな無茶苦茶な映画は、そうないのではないかと思います。

曾根監督 私にしてみたら江戸時代に電気ソケット?と(お客様爆笑)思うんですけど、平気で使うんですよ(笑)。

山根 バストが何とか・・・とも言いますしね(笑)。あのへんから時代越えているわけですよね。

曾根監督 あれは、陽造さんの超現実主義というか、ハチャメチャ主義ですね(笑)。私はもっとまともですよ(お客様爆笑)。

山根 僕が 『(秘)女郎市場』 で一番すごいなと思うのは、セットを壊すところですね。天井は抜けるし、壁は破るし、ほとんど解体してしまいますよね?ついには牛まで出てきて、一緒になって壊すわけですから。牛は2階へあがりましたよね?

曾根監督 よく上りましたよね(お客様爆笑)。

山根 大変だったんじゃないですか?

曾根監督 ごまかして撮るとかすれば良いのでしょうが、どうもそういう気にならなかったのでカメラをそのまま据えて、牛が上るのを待っていたんです(笑)。中々上らないので、怒られました。“オマエに撮らせたら、いくらカネがあっても足らない!” って。それを牛が聞いていたんでしょうね。上りました(お客様爆笑)。

山根 ロマンポルノが生まれた当時、いわゆるピンク映画というものが既にあって、あの映画会社として老舗の日活がピンク映画のマネをするのか?とヒンシュクをかった側面もあるんですよ。ところが 『(秘)女郎市場』 を観ると、“これはピンク映画では撮れないぞ” と思うわけです。何故なら撮影所を使ってセットを建てて、その作ったセットをメチャクチャに壊してしまうワケですから、そういう面白さは “やはり日活が撮ったからなんだな” と僕なんかは思っていました。

曾根監督 アレはちょうど 「大江戸捜査網」 という時代劇をやっていたものですから、そのままセットがあったんです。だから私はセットを壊せば良かった(お客様爆笑)。

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山根 わざわざ作ったんじゃないんだ?!

曾根監督 ちょうど壊さなきゃという時で、解体にもお金がかかるので、私がね(笑)。他にも神代さんの 『赤線玉の井・ぬけられます』 のセットを私が 『昭和おんなみち 裸性門』 で壊し役で使いました。神代さんは作る方で、私は壊す方(笑)。

山根 役割分担をしていたんですね!ところで 『(秘)女郎市場』 が片桐夕子さんと最初のお仕事だと思いますが、どのような印象を持たれましたか?

曾根監督 ああいう役をやらせると、あのコの右に出る者はいないですよ。類まれだと思います。片桐夕子がいなかったら 『(秘)女郎市場』 という作品はなかったと思います。

山根 あの天真爛漫さというか、当時デビューしてまだそんなに経っていなかったですから、女優としてまだ固まっていないという感じがしたんですよ。

曾根監督 (女優になる前の)職場では歩き方などを怒られたりしたそうですが、私の組についたら全然怒られないから、好き勝手にやってみようと思って自由ににやったんですよ。

山根 では、そこですごく解放的になれたんでしょうね。そういう感じがすごく映画の世界に合っていますよね。

曾根監督 『不良少女 野良猫の性春』という作品でも、ちょっとぬけた感じの役をやっていますが、そういう役を他の子にやらせると、どうしてもあざとくなるんですよ。

山根 それがないですよね!

曾根監督 ただ、皆さん片桐夕子さんをすごくポルノチックで魅力的に撮るのですが、私が撮るとポルノチックにならないんですよね。なぜだか分からないのですが(笑)。

山根 そこが曾根監督の個性ですね。今回の特集上映では曾根監督のその他の作品も上映されますので、ぜひご覧いただければと思います。


日活創立100周年記念 特別企画
蓮實重彦、山田宏一、山根貞男が選ぶ愛の革命 
生きつづけるロマンポルノ

★2012年5月12日(土)ユーロスペースほか全国順次ロードショー!★

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