イベントレポート

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東京フィルメックスがスタート!【川島雄三特集】 トークイベントが行われました!
2011年11月19日(土曜日)

第12回 東京フィルメックス (11/19(土)~27(日)) がいよいよスタートし、川島雄三監督特集上映のオープング作品となった 『洲崎パラダイス 赤信号』 上映後に、俳優の寺島進さんをお迎えしてトークイベントが行われました。

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川島雄三監督は、松竹・日活・東宝・大映などで活躍され、意欲的に話題作を発表し続けていたさなか、45歳の若さでこの世を去りました。客観的かつシニカルな “重喜劇” とも称されるスタイルは、今でも多くの映画ファンの心を掴んでおり、その幅広いフィルモグラフィーの中から1950年代の傑作4本が、第12回東京フィルメックスにて英語字幕付ニュープリントで上映されます。

“限定!川島パラダイス♪” と銘打った特集上映初日トークイベントの進行は、東京フィルメックスディレクター・林加奈子さんが務められました。

寺島 初日おめでとうございます。あいにくの雨ですね。

 初日の雨は12回の開催で初めてかもしれませんが、雨が降っていても、晴れていても “映画日和” と思っています。本日は多くのお客様にご来場頂きましたが、『洲崎パラダイス』 面白かったですよね。

寺島 最高でしたね!三橋(達也)さんに、もっと色々なことを聞きたかったなぁと思いましたし、この作品をもっと早く観ておけば良かったと思いましたね。そして、こういう映画に出たかった!

 本作は、勝鬨橋という昭和43年(1968年)までは真ん中から開閉していた橋のシーンから始まりますが、その橋にいるふたり ― 三橋達也さんと新珠三千代さんの腐れ縁という何とも言えない感じが良いんですよね。新珠さんは元宝塚の娘役スターで、このような役は当時サプライズだったかもしれませんが、とっても素敵で寺島さんだったらついて行きますよね(笑)?

寺島 新珠三千代さんをみたら、昔の祇園遊びをした時の女性を思い出しちゃいました(笑)。そう見えてしまうくらい、着物の着こなし方や着物の遊び方などがリアルですよね。

 そうですよね。崩した着方や遊び方がたまりません。

寺島 新珠さんの役は、今だったら真矢みきさんなら出来るかな?とか、三橋さんの役は・・・俺が演りたい!などと考えますね。『13人の刺客』 や 『切腹』 などもリメイクされていますからね。川島雄三さんのこういう作品もリメイクしてもらえたらなと思います。

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 今回の英語字幕付ニュープリントは「東京文化発信プロジェクト」の一環として作成されたのですが、日本では知名度のある川島雄三作品も、実は海外ではそれほど知られていません。日本映画にはまだまだお宝がたくさんあり、昨年やった渋谷実特集がその後海外に行き 「小津、黒澤、溝口だけじゃないの?こんな凄いのがあるんだ?!」 と驚かれ、高い関心をもって頂きました。これをキッカケに川島雄三作品も海外に紹介出来ればと思っています。

寺島 自分も、こんなに面白い作品なんだとビックリしましたね。もっと早く観たかったなぁと思い、昨日 『愛のお荷物』 も観ちゃいました。

 『愛のお荷物』 にも三橋さんが出演していますが、そこではお坊ちゃまな役を演じていますね。

寺島 しかも二役やってるし!こんな幅広く演じられて、凄いですよね。俺は最近ワンパターン化しちゃってるから(笑)、早く打破しないとなって思いました。

 三橋さんは京橋生まれで、シティボーイな感じのお坊ちゃま役から 『洲崎パラダイス』 のようなズルズルした感じの役もまた良いんですよね。その他にも、小沢昭一さん、轟夕紀子さんがご出演され、奥深さと言いますか幅広い演技をみせてくれます。

寺島 昔の人は、今の世代の人よりもぐっと大人だなという感じがしますね。俳優もレベルが高いと思います。川島さんの作品を観たたら、今の自分が恥ずかしくなってきちゃって・・・良い刺激になりました。

 クラシック作品は、もう1回観た時に自分の人生が変わっていることで、また新たな発見がありますし、初めて観る方にとってはフレッシュさを味わって頂けると思います。ところで、川島雄三監督は19年間で51作品を作られ、1963年に45歳で亡くなられてしまいました。

寺島 1963年?自分が生まれた年ですね。

 そうですね。生まれ変わり?

寺島 だったらいいですね(笑)!

 川島監督は青森県(現在のむつ市)ご出身で、『洲崎パラダイス』 でもそうですが、東京の情景の切り取り方が素晴らしい!寺島さんは、あの辺から近いところで育ったのですよね。

寺島 深川ですね。自分がまだ2、3歳の頃、おばあちゃんがあの界隈で小料理屋をやっていて、人手が足りないとおふくろが手伝いに行ったりしていました。

 『洲崎パラダイス』 では、あのお蕎麦屋さんの感じもたまらないですし、今で言う秋葉原のような電気街もチラッと出てきて、あれも凄いですよね。それから今のように高層ビルがないので、デパートのタワー部分もチラッと見えたりと、ああいう東京の切り取り方が素敵ですよね。

寺島 そうですね。東京も空がおっきく、広くみえますよね。

 そうそう!そして、モノクロだから空の広さが余計に胸に沁み込んで、素晴らしさを感じられたのかなと思います。ところで、三橋さんとお会いになったことはないですよね?

寺島 毎日映画コンクールで受賞させて頂いた時、篠崎誠監督とご一緒にいらっしゃって、そこでお会いしました。その時 「はじめまして。自分は三橋さんを目標に頑張ります」 とご挨拶しました。三橋さんが30年ぶりだったか40年ぶりかに主演男優賞を獲られた時だったので、自分もスピーチで 「自分も三橋さんを見習って、40年後も賞を頂けるように頑張ります」 というようなことを言ったんですよね。それを実現させないと・・・と思っていますので、今回は刺激になりました。でも、その時にもっと川島さんの作品を観て、三橋さんに 「あの現場はどうだったんですか?」 など色々聞きたかったです。

 クラシックとの出会いというものに 「遅すぎる」 ということはもちろんないのですが、「会いたかったな。話聞きたかったな」 というのはありますね。ところで今日はプロデューサーの方の顔もお見かけしますので、もし 『洲崎パラダイス』 をリメイクすることになりましたら、必ず寺島さんのスケジュールの確認をして頂けたらと。で、お相手の方は真矢さんでないとダメ?

寺島 あとは黒木さんとか(笑)?

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 本作は昭和31年(1956年)に公開された映画ですが、「売春防止法」 の法案制定がその年の5月で、施行されたのが2年後の昭和33年(1958年)4月でした。昭和33年ってそんなに昔じゃないですよね?

寺島 そうですよね。だから 『愛のお荷物』 の時にも、その問題がいろいろ出てきたんですね。

 『愛のお荷物』 は本作の1年前の公開ですが、川島監督作品はエンタテインメントだけではなく、社会風刺にもポイントが置かれているところがファンの皆さまがお好きな一因かなと思います。今年公開された川本三郎さん原作の 『マイ・バック・ページ』 の中でも、“好きな映画は 『洲崎パラダイス』 ” と、チラッと出てくるところがあるんです。この 『洲崎パラダイス』 のような、川島さんの憎たらしいような作り方と言いましょうか・・・

寺島 憎たらしいというか、いち演者からすると 「クソーッ!!」 という感じですね。だから、その時に出演していた役者さん達にどういう作り方をしたのか聞きたいなぁと思うくらい興味深いですね。

 川島監督は、撮影現場でのテンポをすごく気になさったそうですね。「スピードが大事なんだ!」 と言ってらっしゃって、それをとても徹底する方だったと本に書いてありました。

寺島 では、相当訓練というか稽古していたでしょうね!相当なレベルですよ。あの間の取り方や畳み掛け方など。『愛のお荷物』 なんかセリフがドドドドドーッ!!って。

 そう!そして、掛け合いと踊りは何ともエレガントな感じでね。

寺島 品があるし。

 そろそろお時間になりますが、今日(19日)から始まった東京フィルメックスでは、「東京文化発信プロジェクト」 の一環として英語字幕付ニュープリントを5本ですが作れましたので、今後も海外にも発信し続けて行けたらと思います。

寺島 最近自分はテレビづいていますから、こういう燻し銀の映画に早く出られるように軌道修正していきたいと思います。こういう素敵な作品を観るとやはり刺激になりますし、明日から 「ヨッシャッ!」 という気持ちになって、ダジャレではありませんが “ステキな愛のお荷物” を持って帰れるような感覚になりますので、「やっぱり映画っていいな」 と改めて感じましたね。それから、『洲崎パラダイス』 のように人間関係は嫉妬など色々とありますが、良い意味でのジェラシーは刺激になっていいなと思いました。

 ありがとうございます。強く生きるために良い形で何か刺激し合い、そして映画を観て元気になって頂けたらと思います。“限定!洲崎パラダイス♪” は、11/25(金)まで毎日午前10時から上映いたしますので、お時間の許す限りご来場頂ければと思います。

◎第12回東京フィルメックス公式サイト

『洲崎パラダイス 赤信号』作品概要

川島映画のひとつの到達点であるのみならず、日本のメロドラマ映画史上に燦然と輝く傑作。芝木好子の小説を原作に、歓楽街 “洲崎パラダイス” に流れ着いた男女の離れるに離れられない関係が、歓楽街へ出入りする人物たちとの関わりの中で詩情豊かに描かれる。50年代半ばの社会風俗を背景に、登場人物たちの感情の機微を見事に捉えた無駄のない演出に加え、腐れ縁の男女を演じた三橋達也と新珠三千代が素晴らしい演技を見せている。

監督:川島雄三
脚本:井手俊郎 寺田信義
撮影:高村倉太郎  
美術:中村公彦
録音:橋本文雄  
照明:大西美津男
音楽:真鍋理一郎   
助監督:今村昌平
出演:三橋達也 新珠三千代 轟夕紀子 芦川いづみ 小沢昭一

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