重松清 原作、阿部寛主演の映画『青い鳥』が初日を迎えました。
『青い鳥』は、阿部寛扮する吃音の臨時教師、村内先生と、彼が派遣されたある中学校の生徒たちとの交流を通し、今この国に顕在する中高生のいじめ問題に真正面から取り組んだ作品です。
公開を記念して、シネ・リーブル池袋、新宿武蔵野館、川崎チネチッタにて初日舞台挨拶が行われました。シネ・リーブル池袋での模様をお伝えします。ご登壇されたのは阿部寛さん、本郷奏多さん、伊藤歩さん、太賀さん、荒井萌さん、篠原愛実さん、山崎和也さん、新木優子さん、そして中西健二監督の皆さんです。
阿部寛(村内先生)
― 吃音の教師、ということで苦労したこと
いろいろ研究してからアドリブでやったんですが、最初のうちはものすごく長い間を取ってしまって、生徒の顔色を見たら「長げぇよー」「これじゃ、俺たちの気持ちがつながって行かねぇよ」みたいな感じだったので(笑)、後日修正しながら臨みました。
― 出来上がった作品を見ていかがでしたか?
村内先生は僕が初めて体験するような役だったんですが、言葉が少ないだけに、この先生の言う言葉は本当に一生懸命で、その想いが心から伝わる映画になっていると思います。生徒のみんなが素晴らしい演技をしてくれて、今まで僕はよくしゃべるんだけれども何を言っているのかわからない、という役が多いんですが(笑)、こんなに繊細で、言葉が少ないけどすごく伝わるという映画に初めて出させていただいて、とても感謝しています。
― 生徒役の皆さんに久しぶりに会って
大きくなったなぁ、という感じですね。この時期は成長が早いしいろいろなものをいっぱい吸収する時なので、いい人間になってほしいですね。今回は教師と生徒役でしたが、僕も生きている限り役者をやっていくのでまたどこかで一緒になれたら楽しいですね。
― 会場の皆さんへメッセージをお願いします
この映画を通じて“責任”という言葉の大切さを改めて考えさせられました。今の世の中、責任を取らない人はたくさんいるし、知らないうちにいやな模範になっている場合もあります。山内先生が言った言葉は僕自身とても身に沁みました。先日この映画の撮影現場となった中学校で試写会をやったのですが、休みにも関わらず皆さん集まってくれて、その時普段あまり発言しないような生徒が手を上げて積極的にこの映画の感想を言ってくれました。彼が手を上げたことによって、周りがどよめいていたんですが、この映画に何かしら子どもたちの心を打つものがあったと思うと、とてもうれしかったです。今日公開になりましたが、世の中にそういう良い反響が起きればよいなと思います。
本郷奏多(園部真一)
― 役作りで苦労されたこと
スタッフや周りの方が、カメラが回っていないときも同じような空気を作っていてくれたし、現場もとてもいい雰囲気だったので、それほど苦労しませんでした。
― 本郷さんから見た阿部さんの村内先生はいかがでしたか
一番すごいなと思ったのは、カメラの回っていない時も同じように村内先生の空気を作っていらして、意識して生徒と距離を置いていて役になりきっていたところですね。メークさんとかにちらっと聞くと、ものすごく面白い人だと伺ったんですがそんな一面は最後まで見られずでした(笑)。でもそんな空気を保っていて下さったので、僕たちはすんなり役に入れたのだと思います。
伊藤歩(島崎先生)
― ご自身の中学時代など思い出されましたか?
私の学校ではあまりイジメとかはなかったのですが、今回教師役をやってみて、その当時先生たちがどんな目線で生徒たちを見ていたのかということを考えたりしました。
太賀(井上武志)
― 今回出演されていかがでしたか?
井上は自分と似ているところがたくさんあったんですが、でも井上が置かれている状況とか違うところもいっぱいあって、もし自分があいつの立場だったらこう思うのかな、ということをいろいろ考えて演じました。
荒井萌(早川由香)
― 一番印象に残っているシーンはどこですか?
井上君と梅田君の喧嘩のシーンで、ものすごく迫力があって、近くにいた生徒役の女の子が迫力に圧倒されて泣き出してしまったことが印象に残っています。
篠原愛実(高木沙枝)
― 野口君の机を教室へ戻すシーンではどんなことを感じましたか?
初めて会った先生から、いきなり自分たちが犯した過ちを振り返らせられるかのように、野口君の机を教室に戻すように言われれば、先生がこれから私たちに対して何をしてくるのか全くわからないという不安や戸惑いの気持ちを感じると思います。その気持ちを高木沙枝としてどう表現したらよいかを考えながら演じました。
山崎和也(野口哲也)
― 撮影中、現場ではいかがでしたか?
現場でみんなと仲良くやりたかったんですが、一度もみんなと現場で一緒になることはなく、打ち上げに行った時にやっとみんなに会えて、「この人たちが僕をいじめてたんだなぁ」と思いました(笑)。
新木優子(塾に通っている子)
― 村内先生のような担任の先生はいかがですか?
(実生活では)面白い先生が担任になることが多いんですが、村内先生のような心から優しい先生が担任の先生だったら、毎日学校が楽しいんじゃないかなと思います。
中西健二監督
― この作品をご覧頂いた方に感じてほしいこと
この作品は、イジメはこうすればなくなるというような特効薬的な結論を提示する映画ではありません。この映画を観て、感じたことを大切にして下さい。映画を観た感想でもいいですし、将来こんな人になりたいとかどんなことでもかまいません。この自分の“想い”というのがじつは非常に重要なんです。これを持つことによって、他の人もこの想いがあるのだという想像力が生まれます。それを大切にしてほしいと思います。
11月29日(土)より、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋 他全国ロードショー!!
原作:重松 清「青い鳥」(新潮社刊『青い鳥』所収)
監督:中西健二 脚本:飯田健三郎 長谷川康夫
出演:阿部寛 本郷奏多 伊藤歩 太賀 荒井萌 篠原愛実 高田里穂 山崎和也 新木優子ほか
主題歌:まきちゃんぐ(オープニング・テーマ「鋼の心」 エンディング・テーマ「さなぎ~「青い鳥」ヴァージョン」vap)
©2008「青い鳥」製作委員会