若きイラストレーターがオーストラリアの大平原を舞台に、現代の愛と青春のあり方を追求する情熱大作。
スモッグの下に息づくマンモス都市、東京。そこで若いイラストレーターの磯村敬一は退屈な毎日を送っていた。サイケだ、ハレンチだと騒がれていても、敬一には関係なく生活の疲れが見えるのである。日本から脱出したい、外国で刺戟のある仕事をやりたいといつも思っていたところへ、敬一の荒野のイラストの評判を聞いた松坂屋デパートから、荒々しい荒野のイメージと優美な製品とのコントラストでポスターの依頼が来た。丁度そのとき、デパートで“世界の旅・オーストラリア”の写真展が開かれていた。広々とした原野に魅せられた敬一は、オーストラリアに行くことに決めた。自分のマンションを売ったお金で行くのである。快晴の空を飛ぶカンタス航空ジェット機でゆきとどいたスチュワーデスのサービスを受けているうちに、オーストラリア大陸の上空にさしかかった。果てしなく続く広大な原野に見とれているうちにシドニー空港に降り立った。敬一はホテルで、敬一の絵をニセモノだと東京で言った女に逢った。敬一を見た女の眼にも一瞬何かがかすめたようだった…。