華やかなネオン街、欲望と暴力が複雑に交錯する世界で、一人の男が愛と復讐に生きるハードボイルド娯楽作品。
新宿の裏通り、続々と出勤してくるホステスたちが羨望のまなざしで挨拶を交わしていくのは、バーテンの英次だった。英次は男前で腕っぷしも強く、この世界でも顔がきく。しかし面倒見が良すぎることから逆にトラブルが絶えなかった。今日も以前働いていたバーのホステスを助けてやり、そのことで郷原商事というヤクザまがいの連中から追い回されてうんざりしていた。そんな理由もあってなかなか一つのところで働き続けられない英次だったが、ある一流のクラブのママに頼まれて、そこのバーテンとして働くことになった。しかし表は一流のクラブでも裏では色々と事情があり、店で出している洋酒は密輸品が多いことや、ママが郷原と繋がっていることなどを英次は知ることになる。しかし何より英次を驚かせたのは、圭子がピアノ弾きとしてこのクラブで働いていたことだった。英次と圭子は一年ほど前に出会い、お互い名も告げず別れたが、その思い出は二人の心に今も生きていたのだ。