昭和初期の河内を舞台に、秀才青年が対照的な二人の女の間で揺れる。『悪太郎』と同じく今東光の原作を鈴木清順が映画化したリリカルな青春作品。
昭和初期、大阪南部の河内平野の一角で鈴木重吉は生まれ育った。貧農で酒と喧嘩軍鶏に現を抜かす父の重兵衛と小柄だが気の強い母・お仙の下で一人息子として成長した重吉は、少年たちの憧れであった京都の第三高等学校に入りたくてたまらず、反対する重兵衛を退けて強引に近くの八尾中学に入ってしまった。ある日、同級生の三島が、若い女と歩いていたという理由で風紀委員から制裁を受ける。それを助けた重吉はしばらくして友人らと三島の家に招待された。彼の家はこの辺りの地主で金持ちだったが、先日の制裁事件を気にする様子もなく悪い遊びに耽る三島の姿に、重吉は怒りを憶えるのだった。憤然として席を立とうとした重吉は玄関で三島の妹・鈴子と出会い、その美しさに息をのむ…。