狼の王子
おおかみのおうじ

浮浪児から拾われ、やくざの若い二代目として育てられた男の悲劇的な半生を鋭いドキュメントタッチで描く、石原慎太郎原作の異色ドラマ。

昭和25年、戦後の混乱がまだ影を引く北九州。タケ、ギン、サブ、ヨシ、カネといった浮浪児の一群も、その影の一部分だった。自分で食う手投をみつけなければ、飢死してしまう。彼らは米兵にまとわりつき、スキを見つけてはポケットからドルをかっさらった。タケが、彼らのボス的存在だった。爛々と光る眼、いかつい体つきに無限のファイト。それはさながら狼の子供をみるようであった。鼻つまみの彼らにも、黒人のビッガーという味方がいたが、まもなく朝鮮事変で出動していった。完全に孤独となった彼らが韓国へ脱出しようと企てたとき、タケは日下万蔵に見出された。昭和30年、武二(かつてのタケ)は、若松港で石炭荷役を牛耳る日下組の若大将となっていた。しかし、5年前とは人が変わったように控え目な男になっていた。そのことが、万蔵や一の乾分・文五郎には不満だった。ある日、万蔵は、ケガを負っている武二を無理やり連れ出し歩いていたとき、加納組の刺客の待ち伏せにあった。足の傷のため一歩も動けない武二の眼の前で、万蔵は殺された。まもなく犯人は捕まったが、証拠不充分で加納組が罪を逃れる形勢となると、武二は犯人と加納を射殺した。3年の刑期を終え出所した武二は、出迎えに来た文五郎から東京へ行くよう促された。若松では今や加納組が羽振りをきかせ、二代目が武二の出所を手ぐすねひいて待っているという。東京で武二は、島原組の一門である八千代会という反左翼の団体に入った。折からの新安保条約反対のデモの騒ぎの中、武二は新聞社で働く葉子と知り合った。軽薄な都会生活に飽き飽きしていた葉子は、自分の中から何かを探りあてようと焦る武二に魅力を感じ、武二もまた、自分と同じような境遇の葉子に愛情を感じるようになっていた。しかし、かつての浮浪児仲間ギン ― 今は加納組の若手幹部となっている立花銀次の出現が、眠っていた武二のやくざの血を再び呼びさました…。

日本
製作:日活 配給:日活
1963
1963/10/4
モノクロ/103分/シネマスコープ・サイズ/8巻/2806m
日活
【東京都】千代田区(国会議事堂附近、三宅坂附近、飯田橋・警察病院、有楽町近辺) 
【福岡県】北九州市(若松港・藤木第四貯炭場、中川通り、若戸大橋)/福岡市(福岡地方裁判所)/▲刑務所、▲岩松公会堂 
【神奈川県】川崎市(三井埠頭)