伊豆の踊子
いずのおどりこ

大正の頃、伊豆天城を背景に旅芸人の踊り子に寄せる高校生のほのかな慕情を描く抒情篇。純情なヒロインに吉永小百合、頭脳明晰で孤独な高校生役に人気絶頂期の高橋英樹を迎え、作家・川端康成の基点となった名作文学を映画化。

大正末期。若葉が美しい、のどかな伊豆の街道。修善寺をたった一高生の川崎は、道中、度々旅芸人の一行とすれちがった。同じ路を行っているらしい彼らに、川崎は親しみをおぼえるようになっていた。峠のトンネルを越えたところで旅芸人の男が話しかけて来た。一行は大島の人で、四十女を中心に男一人と若い女三人という五人連れ、川崎と顔見知りになり弾んでいる踊り子は、一番年下のようである。下田まで一緒に旅する約束をした川崎は、その夜、お座敷へ呼ばれている踊り子達のざわめきを遠くに聞きながら、あの明るい笑顔をした踊り子の夜を思うと、暗い気持になった。しかし、翌朝、兄が昨日知りあった書生さんと一緒に風呂に入っているのをみつけ、うれしさのあまり彼らに手を振る踊り子をみて、まだ汚れを知らぬ子供なのだと川崎は心が晴れる思いだった。踊り子は、その日、川崎や兄たちと楽しく過ごし、夜は仕事のあと川崎に寄り添って本を読んでもらった。翌朝、仕事で一日出発を延ばすという一行の男から、川崎は思いがけず身の上話を聞いた。男は栄吉といい、二十四。上の娘・千代子は自分の妻、中の娘・百合子は大島でやとった十七歳。下の踊り子カオルは十四で自分の妹。四十女は千代子の実の母親だという。カオルにはこんなことをさせたくないが、事情があると淋しそうに語るのだった。一行と川崎は急速に親しくなっていくのだが…。

日本
製作:日活 配給:日活
1963
1963/6/2
カラー/87分/シネマスコープ・サイズ/9巻/2372m
日活
【静岡県】伊豆市(天城峠、旧天城トンネル)/河津町(初景滝、湯ヶ野温泉・福田家、湯ヶ野の街、湯ヶ野橋)/東伊豆町(稲取港)/下田市(甲州屋、平滑川沿いのペリーロード)
【東京都】千代田区(明治大学記念館、駿河台下など)
予告編の演出は村川透