刑事物語シリーズ第八弾。今回は舞台を草津温泉に移して、そこに起った謎の郵便車強盗事件にからむおなじみ親子刑事のアクションドラマ
山に囲まれた温泉郷、草津。その町の近く、広大なすすきヶ原をのんびり走ってゆく一台の郵便車があった。突然ハイキング姿の男が飛び出すと、あっという間に郵便車にはね飛ばされてしまった。「たいへんだ!」乗っていた局員の久保田と三島は慌てて車から降り男を介抱しようとした。その一瞬のすきに反対側から郵便車に飛び乗った二つの黒い影が車を暴走させ始めた。「しまった、泥棒だ」久保田と三島が青くなって車を追っているうちに、はねられた男もいつしか消え去ってしまった。地元の警察が捜査をした結果、やっと殺生ヶ原で発見された郵便車は無残に荒らされ、巨額の現金書留が奪われていた。その夜、草津町の薄汚いバー「かよ」の奥では昼間の男たち、遠州、神風とハチ、それにマダムの加代が、奪った書留を次々と開封していた。そこへ暗い表情でこっそり入ってきたのは意外にも久保田だった。久保田は練馬の鑑別所を出てから、一井旅館の仲居をしている弘子と結婚し、この町の郵便局で臨時雇いとなって真面目に働いていたが、それをどう嗅ぎ付けたのか鑑別所仲間だった遠州たちが流れ着き、彼をおどし使って一芝居打ったのだ。久保田は遠州に手を切ってくれと懇願するが一通の現金書留に目を留めるとハッとなった。それはまぎれもなく妻の弘子から東京の佐藤源造宛の手紙で、5千円も同封されていたのだ…。