あじさいの歌
あじさいのうた

石原裕次郎演じる明るく健康な青年の善意が古い因襲を破り、頑迷な家庭に春をもたらす。石坂文学を映画化した文芸篇。

のどかな春の日を浴びて、ひとりの青年が老人を背負って歩いていた。汗びっしょりにフウフウいっている青年は、商業デザイナーの河田藤助。彼の背中にふんぞり返っているのは、源十郎老人。このふたり、ときどき口喧嘩しているが、実はいま知り合ったばかり。散歩を楽しんでいた藤助が、道端で足をくじいて苦しんでいた源十郎を家に送り届けているところなのだが、この老人よほどの頑固者とみえて、親切な青年にありがた迷惑だと言わんばかりの態度をみせていた。源十郎の家は古い北欧風の洋館だったが、藤助は門から出てきた娘・けい子の不思議な優雅さにとまどい、呆然とした。藤助は、源十郎が病院に行くのを見届けると、再び源十郎邸を訪れた。このあつかましい来訪者に使用人は警戒の色をみせたが、けい子は彼を招き入れた。けい子の母親は彼女が幼い頃に駆け落ちしてしまい、以来源十郎はけい子を家にしばりつけ、世間から隔離した生活を送らせていた。そんな彼女にとって、藤助の登場は砂漠に落ちた一滴の水のよう。そして彼女にとってばかりでなく、この家にとっても、かたい氷を解かす春の風であった。けい子の美しさに打たれた藤助は、庭に咲いたあじさいの花の傍で、けい子を写真に収めた。

日本
製作:日活 配給:日活
1960
1960/4/2
カラー/106分/シネマスコープ・サイズ/10巻/2885m
1960 日活株式会社
【東京都】中央区(銀座、清州橋)/千代田区(日比谷公園)/渋谷区(代々木駅前、代々木駅ホーム)/世田谷区(砧) 
【神奈川県】横浜市(横浜港)
【大阪府】大阪市(恵美須町横町、通天閣、汽車三等車)