その壁を砕け
そのかべをくだけ

平和な山村に突如発生した殺人事件。その捜査と裁判を通し、真実を追求する難しさを鋭く衝く異色大作。

東京と新潟を結ぶ国道を一台のワゴンがひた走りに走っていた。運転しているのは、自動車修理工の渡辺三郎。東京を正午に発ち、翌日午前10時に新潟駅に到着予定だ。新潟駅には許婚者・道田とし江が待っている。出逢いは三年前、修理工達行きつけの食堂に、とし江は勤めていた。二人は愛の巣を築くため、三郎は東京、とし江は新潟で懸命に働き続けた。三郎は好きな酒も煙草も止めて貯金し、やっと念願のワゴンを買い、新潟で独立する自信を得て結婚することになった。ハンドルさばきも軽く、三郎は山間の国道を突っ走った。車は三国峠の頂上を越え、これから新潟へは一本道。約束の午前10時には充分間に合う。峠を下り、小さな部落にさしかかったとき、手を振っていた男を便乗させた。とし江と結婚できる嬉しさで幸福感にひたっていた三郎は、その見ず知らずの青年にも恋人の話をしてしまうほどの陽気さだった。ところが男を駅近くの雑木林で降ろし、駅前広場にさしかかったとき、突如現れた警官によって停止命令を受けた三郎は、逮捕されてしまった。なぜ逮捕されたのか知る由もない三郎は、怒り狂ってわめいたが、何か重大な事件に巻き込まれたということは判った。やがて刑事に連れられ町の郵便局に一歩踏み込んだ三郎は、あっ!と叫び目を蔽った。そこは一面の血の海、頭を割られた男の死体が転がり、横には血まみれの女が突伏していた。三郎はやっと事態を呑みこみ「違う!俺じゃない!」と慄然として叫ぶが…。

日本
製作:日活 配給:日活
1959
1959/6/23
モノクロ/100分/シネマスコープ・サイズ/11巻/2732m
日活
【新潟県】長岡市