生命の冠
いのちのかんむり
画期的傑作「人生劇場」の内田吐夢が、再度渾身の情熱をたたきこんでものする極北映画!(当時の広告より)
岡譲二、伊沢一郎、原節子が過酷な運命に立ち向かう3兄妹を演じる。
あらすじ 「本当の商業は真の説教、真の戦闘と同じように場合によっては自ら進んで損失をも死をも辞せないものでなくてはならぬ」と固く信じて生きる男、有村蟹罐詰製作所主・有村恒太郎は弟欽次郎と共に日夜、米国ローゼン商会へ向けて輸出する罐詰の製造に追われている。だが近年にない寒気と流氷にはばまれ不漁が続き、ローゼンとの契約を完全に果たし得る日は何時来るかと危ぶまれていた。折悪しく有村の持ち船が13名の乗組員と共に行方不明となった。夜通し浜で船の帰りを待つ有村の前に油にまみれた乗組員・北村の帽子が淋しく打ち上げられた。疲れ果てて事務所に帰った有村の眼に欽次郎と輸出商片柳玄治の口論する姿が映った。有村が従来のように輸出商の手を経ず直接ローゼンと取引を始めたことを根に持つ片柳はあらゆる悪徳を行っても自己の利をむさぼるのだった。片柳の帰った後、製品を調べると意外にも禁止されている雌蟹の肉の詰まっている罐を発見して有村は驚いた。「欽次郎、俺は不正な金や契約を無視してまで家族を養いたくはない、正しい行いをしてくれ」と有村の声はいつになく激していた。「破産しなくて済むのに馬鹿正直にも程がある」と弟も負けてはいなかった。有村はあらゆる苦難を忍んで雄蟹を買い集めた。工場の煙突から真っ黒な煙が立ち上り女工たちも活気を増して働き出した。そして海で死んだ13名の四十九日の供養がしめやかに行われる頃、ローゼンに対する契約だけの品を製造し終えた。だがその時は有村工場崩壊の時であったのだ。職を失った女工たちもそれぞれ帰国した―。やがて新しい箱に詰められた罐詰の積まれた船が出て行く。それを見送って悲憤の涙をくいしばる欽次郎と戦い敗れた恒太郎と妻の淋しい姿が見えた。
日本 製作/多摩川撮影所
日活
1936
1936/6/4
モノクロ/スタンダード・サイズ/9巻/2588m/94分
<ご注意>
戦前の製作作品(1942年以前)は、資料の不足などの事情により、当HPのデータの内容が必ずしも正確なものとは限りません。
日活