恋女房
こいにょうぼう
週刊朝日特別号所載の片岡鉄兵原作「閉め出された花嫁」より取材して鈴木紀子が脚色、千葉泰樹が監督したもので、瀧口新太郎・花柳小菊の「あこがれコンビ」第3作。多摩川撮影所最後のサウンド版で以後すべてトーキー作品となる
あらすじ ある酒場で「蛍の光」を合唱している若いサラリーマンの一団があった。酒場のマダム・道子は寂しそうにピアノを伴奏していた。今宵は近々結婚式をあげる梶島丈吉のための一夜だった。道子は秘かに梶島を愛しており、梶島も道子の心を知っていたが、それは淡い青春の一頁として今宵限り消え去るものだった。「おめでとう」と道子は寂しく微笑んだけれど梶島は云うべき言葉もなく酒場を出た。梶島が去った後へ道子を狙っている梶島の会社の専務岡本が自動車を乗り付け道子を執拗に口説いていた。友達と別れた梶島は酒場へ一人で引き返してきたが、専務と知らずに岡本に食って掛かり、馘になると覚悟したが、却って結婚祝いとして思わぬ金をもらった。その金で指輪を買って新妻へ贈り物とした。やがて梶島は結婚式、そして新婚旅行は熱海へと甘い夢の新婚生活が始まった。そんなある日の日曜日、新夫婦はデパートへ買い物に出かけた。デパートの食堂で偶然会った道子と親しそうに話している夫の姿に妻の芳子は軽い疑惑と不安を感じた。買い物に夢中になって、芳子は郊外電車の乗り場まで来て、手袋を買うとき夫から贈られた大事な指輪を置き忘れたのに気付いて青くなった。芳子を先へ帰して梶島はデパートへ指輪を探しに戻った。梶島が指輪を探している売り場へ通りかかり素早く指輪を見つけ出した道子は「もし指輪があったら一晩私につきあうのよ」と無理に梶島を酒場へ連れてきた。一方家へ帰って来た芳子は合鍵を夫が持っていたため中に入れず仕方なく門口で待ったが、待てども夫は帰らない、そのうち日が暮れ生憎雨迄降ってくる哀しさ寂しさにいつか街路を彷徨い、通りかかった円タクへ無意識に乗って東京駅へ来てしまった。そして思い出の熱海へと汽車に乗ってしまった。道子の誘惑から逃れた梶島は、合鍵もなく戸の開かない門口にしょんぼり佇んでいる芳子の姿を想像して家へ帰ったが妻の姿はなかった。果たして新婚夫婦の運命やいかに?
日本 製作/多摩川撮影所
日活
1935
1935/12/8
モノクロ/スタンダード・サイズ/6巻/1532m/サウンド版
<ご注意>
戦前の製作作品(1942年以前)は、資料の不足などの事情により、当HPのデータの内容が必ずしも正確なものとは限りません。
日活