vol.17 装飾 尾関龍生さん

さて、今回は「装飾」の尾関さんにインタビューしました。みなさんは「装飾」の仕事がどんなものか分かりますか。俳優さんがくわえるタバコもライターも手に持つカバンや座るソファーだって、み~んな「装飾」チームが用意しているのです。尾関さんはこの仕事を始めて30年!!超多忙な方で、この夏にクランクインする映画の準備の中を突撃インタビューしてきましたっ。


【プロフィール】
1992年 「いつかどこかで」
1994年 「熱帯楽園倶楽部」
1995年 「静かな生活」  
1996年 「キッズ リターン Kids Return」
1998年 「中国の鳥人」
1998年 「HANA-BI」  
1999年 「白痴」
1999年 「コキーユ Cogaille」
2001年 「DAN-BALL HOUSE GIRL」
2001年 「殺し屋1」
2001年 「天国から来た男たち」 
2002年 「ピンポン」
2002年 「Dolls」
2003年 「座頭市」
2004年 「きょうのできごと」 

「装飾」とはどういうものなんですか

分かりやすく言えば『小道具』を扱う仕事ですね。役者さんが持つ道具や生活しているであろう舞台設定のもの…例えばカバンとか家のタンスやテーブルなどを「監督の演出」やその芝居にあわせてどう揃えるかという事です。

大抵いつも3パターンは考えるようにしているんですよ。一つは僕自身の考えで選んだもの。それから監督の好みを考えたパターン。そして予備として、いつも無難なものも用意しておきます。

例えば《ペン》のように安いものだったら、10通りでも用意出来ますよね。でも何万円もする高価なものだとそれは無理なんです。だから「時間」と「予算」の兼ね合いの中でその時によって必要なものを買ったり、借りたりするんです。50万円の時計もカタログで見るのと本物を現場で見るのでは違いますし…そこが難しい。

装飾の上に立つと「予算管理」的な仕事の割合が大きくなります。全部に同じように力を入れる事は出来ませんから、台本の中で「ここ」という場所…例えば主役の部屋とかメインどころを決めたりしますね。

今ではインターネットがあるので、時代物や調べ物をしたり必要な情報を捜す事が昔より楽になりました。

装飾とデザイナーの違いは何でしょうか

デザイナーは空想力をもって、実際に台本をデザイン(画)にしてリアリティを持たせてゆくものですが、装飾はそのデザイナーによって「デザイン」されたリアリティある設定の中にリアリティのある《もの(道具)》を持ってくることだと思いますね。

僕としては団地の中に生活するサラリーマンの家よりも、性的異常者や殺し屋の部屋を装飾する方が面白いですね。色々遊べますし、色も付けられるから。

尾関さんはどうやって「装飾」の仕事をやるようになったんですか

僕は最初、テレビ局の装飾のアルバイトで入ったんです。でもテレビ局での仕事は、同じセットを同じように飾る繰り返しだったんですね。それで、よりフィルムの世界に行きたいと思うようになったんです。 でも当時は行った先がフィルムとはいえ、テレビ映画の連続物が主体だったので、「やはりフィルム本来の仕事は映画だ」と思い、それからは映画の仕事を中心にやってきました。でも、運が良かったから出来ただけなんでしょうけれど。

たいへんな事はなんですか

たいへんというか悲しいのは、本位でない監督や作品の仕事をしなければいけない状況になる時でしょうか。合う人と合わない人がいるのは当たり前の事ですし、誰でも合わない人の方が遥かに多いものかもしれません。でも合わなくても、僕の場合、やりにくい事はあってもイヤではないんですよ。それはどんな職種でもある事だと思うし、現場の人間なんて個性の強い人が多いですから合い入れない者は合い入れないんです。(笑)

だけど、そういう合わない新しい人とやるのは好きなんですよ。親しい楽しい仲間とだけ映画を作っていても、必ずしも作品が面白くなるとは限らないですし。

それでも《合わない事を楽しめない》現場も時々はあります。そういう時はトラブルも多く、辛いですね。自分が辛いという事は、下の人間にとってはもっと辛いという事だと思うんです。やっぱり製作的予算の問題だけではない監督の人間性とかも関係あるかもしれません。

現場では突然に「これを用意して欲しい」と注文される事もありますよね

それはもう仕方ないですよ。綿密な計画を立てても、裏切られるものなんです。特に北野組なんてね!!(笑)だから逆にどんな事にも対処出来る気持ちでやる事が大切だと思っています。

普通、装飾は1ヶ月前から準備しますが、大作ですと2ヶ月前からやります。最短で6日で全て準備した事もありました。

印象に残っている作品はどんなものですか

『いつかどこかで』(小田和正監督)、『中指姫』(堤ユキヒコ監督)、『山田村ワルツ』(金子修介監督)、『熱海殺人事件』(高橋和男監督)、『僕らはみんな生きている』(滝田洋二郎監督)、『熱帯楽園倶楽部』(滝田洋二郎監督)、『殺し屋1』(三池崇史監督)などは面白かったですね。監督やデザイナーの要求にきちんと追いつけるか、いつも綱渡りをしていました。型にはまったレールがあまり好きじゃないですから、そういうギリギリの中で要求に答える事が出来たときは装飾部として就いた達成感はありますよね。

装飾の仕事に就きたい人はどうすればなれるんでしょうか

僕のとこに電話してください。(笑)若い人は中々取っ掛かりがないと思っているかもしれませんけれど、とにかく動いた方が早いと思いますね。飛びこんでこないとやれない。多少もらえるお金が安くても頑張る気があれば、撮影所に来て「やりたい」と言えばいい。何でもそうだと思いますが《やる気》と《タイミング》ってあると思うんですよ。【継続は力なり】ではありませんが、2、3年やれば何か見えてくると思うんです。だから何でも2、3年やってみる。

早くやめてしまうと色んな事を見極める前に、ただイヤでやめてしまう事になるから勿体無いと思うんです。少し我慢すると違う人生も見えてくるから、そこから新しい道を歩んでも遅くないと思うんですよね。

最近は世の中全般的に女性の方がやる気を前面に出している気がします。この仕事をするのに、勿論センスや才能は必要だと思いますが、一番は【人間性】だと思う。やっぱり共同作業ですから。

今後やりたい事はありますか

今までにやっていないよう作品をやってみたいですね。「やりたい事はありますか」じゃなくて「やりたい場所はありますか」って聞いてよぉ。(笑)そしたら【孤島】ですね。だいたい3~4年に一回海外での仕事が入るんですが、遊びや観光でいく海外とは全然違って、自分自身の良いギアーチェンジのキッカケになるんです。例えばタイのメインストリートじゃない田舎町の裏通りで、色々仕事のものを捜しているとすごい面白い発見があるんですよ。

そういう風にリフレッシュ出来ると色んな事がノーマルな状態に戻って、また仕事が面白いと思えるようになります。不思議なもので《行き詰まる》と、新しい仕事や人との出会いが又あるんですよね。

最後にメッセージをお願いします

やっぱり映画を何でもいいから見てほしいですね。それもDVDやビデオでなくて出来れば劇場で。最近また劇場にゆく人が増えてきていますよね。劇場で見る《面白さ》を再認識してくれているのか、と思います。小さい映画に着目する人も増えていますし、嬉しいことですね。


インタビュー後記

装飾の仕事はだいたい4人ぐらいのチームでやっています。家具や持ち道具(手にもつカバンとかタバコ等)を準備したり、時には「作り物」を用意します。例えば『座頭市』では《刀で斬られたとっくりが落下して地面で割れる》という設定のものがありました。ワンカットで割れるまで撮影する場合と、1)斬られて2)落下して割れるの2カットでは、事前の準備も違うんですよ。何が違うのでしょうね??そうして成功するように撮影本番までに試行錯誤して何度もテストしておきます。(こういう特殊な操作のものは「操演部」がやる場合も多いです)

装飾のお仕事は臨機応変に対応出来る柔軟性が必要だとつくづく思いました。尾関さんが話してくれた《合う、合わない人》の話しもとっても参考になりました。