vol.11 視覚効果・合成 橋本満明さん / 光学太郎さん

今回は視覚効果・合成の仕事をしていらっしゃる橋本満明さんと光学太郎さんにインタビューしました。お二人とも若く見えますが、キャリアは20年ぐらいあります。(現場の人は年齢不詳なあやしい人が多いのですっ)
共に「合成」という新しい分野を開拓しながら、進んでこられたんですよね。



光学さん(左)と橋本さん(右)

【光学さん最近の主な担当作品】
2001年『ムルデカ』
2001年『ターン』
2002年『仄暗い水の底から』
2002年『OUT』
2003年『壬生義士伝』
2003年『昭和歌謡大全集』
2003年『魔界転生』
2003年『座頭市』
2004年『レディ・ジョーカー』
など

【橋本さん最近の主な担当作品】
1998年『愛を乞うひと』
1999年『学校の怪談1/2/3/4』
1999年『御法度』
2001年『ムルデカ』
2002年『仄暗い水の底から』
2002年『笑う蛙』
2003年『壬生義士伝』
2003年『魔界転生』
2003年『座頭市』
2004年『レディ・ジョーカー』
など

 
どうしてこの仕事をやるようになったんですか

橋本: 僕はもともとアニメーターで、コマーシャルなどで放電アニメを作っていたんです。雷とか光線のピカピカ…ビームとかね。その後、仲間と一緒に『未来忍者』という映画の立ち上げをする事になって…その時のプロデューサーが現・日活社長の中村雅哉さん。(笑)その映画で、エフェクトセンターの2階に間借りをした時に、太郎さんと知り合ったんです。

光学:  僕は、その日本エフェクトセンターでケミカル合成をやっていたんですけれど、そこをやめてコマーシャルの会社に入ったんです。より広い視野を求めて…と言うのはいい言い方で(笑)コマーシャルの方がその頃予算があって、色んな事に挑戦出来たんです。(※1)モーションコントロールカメラとかミニチュアとか…だけど、コマーシャルがどんどん面白くなくなってきました。それで、また映画がどうしてもやりたくなったんです。そんな時、橋本さんから「辞めたらしいね。やる?」と電話がありまして。(笑)

合成にずっと興味があったんですか

橋本: 子供の頃から合成が好きでしたね。小学生低学年の頃『ウルトラマン』と『帰ってきたウルトラマン』をいつも見ていたんです…この二つで何が大きく違うか知っていますか?『ウルトラマン』では“光線銃”だったものが『帰ってきた~』では“火薬”になっていたんですよ。当時でも「合成が減った。火薬にしやがった」と思いましたからね。(笑)

光学:  僕もあれは寂しかったですねぇ。子供ながらに「安くなった」と思いました。テレビを見て“スペシウム光線”は、どうやって出しているんだろう、輪ゴムでやっているんじゃないか、とか当時真剣に考えたりしていましたね。

やっぱりそういう「芽」って小さな頃からあるんですねぇ。(笑)ところで、素人目に見ても合成の技術はものすごい速さで進歩していますよね、どうやって技術を習得するものなんですか。

光学:  機械がよくなっているのは事実ですけれど、結局製作のベースの部分は変わらないんです。例えば、車に乗るのと一緒ですよ。色々な新しい車種や設備がついてきても、運転の基本は変わらないでしょう?ツールが多少変わるだけなんです。

橋本: 今はデジタルのそういう学校もありますが、ほとんどはゲームソフトの学校ですね。それに学校に行っただけでは、正直中々力にはならないと思います。僕らにとって先生は実際の【映画】ですよ。「これ、すごいなぁ。どうやっているんだろう」と見てゆきますね。

合成スタッフが現場にいるのが、普通になってきましたよね。まだまだ進化してゆく新しい分野なのでしょうか

橋本: 『魔界転生』の時、俳優の佐藤浩一さんが雑誌のインタビューで「合成の人が現場にいるのはいいことだと思う」と答えてくれていたんです。嬉しかったですね。現場で「こういう事をやりたい」という話になった時、きちんと答えてあげられるようにする事が合成を理解してもらう為にも、よい仕事をするにも大切だと思いますね。

光学: 滝田洋二郎監督もこういう合成の進め方は面白いと誉めてくれました。現場はカメラマンとか監督が引っ張っていくものですけれど、そういう合成を含めた演出を現場で一緒に考えてアイデアを出してゆく…そういうのが楽しいですよね。現場に出る前は素材だけを渡される立場でしたので「何でこんなものを撮ってくるんだよ」と当時は思いましたね。今は自分が現場にいって素材の取り方をお願い出来ますから、その分責任も持てるんです。

俳優さんや監督にとっても心強いと思いますよ。どうしてそういう絵が必要なのかお互い理解しあっているのとしていないのでは信頼関係も違いますものね。
ところで、「合成」と「CG」は違うものなんですか

橋本: 今は一般に映画を見るお客さんも普通に「このCGすごいね」と言いますよね。それは「この合成すごいね」と同じ意味で言っているんだと思いますが、本当は明確に違うんですよ。皆さんがいっている『CG』は“コンピューターグラフィックス”の意味でしょう。それはExelやWordなどのソフトも含めたパソコンに映し出される全てのものを指すんです。でも僕らが映画でやっているものは本当は『CGI』といって“コンピュータージェネレーテッドイメージ”というものなんです。つまり“コンピューターの中で加工して作り出されたイメージ映像”ですね。

だから『座頭市』の血しぶきなんて皆さんCG、CGとおっしゃいますが本当はCGじゃないんです。あの血は実際にフィルムで撮影していて、パソコン上で合成している訳ですから『CGI』が本当なんですよ。



ここで橋本さんは打ち合わせのためいなくなってしまいました。

どんな風に合成の作業はしてらっしゃるんですか

光学: まず現場でフィルムで芝居を撮影しますよね。そしてそれを監督が編集します。使い処がはっきりすれば、OKテイクの画をコマで切り出して「スキャニング」するんです。「スキャニング」と言うのは“フィルムをデジタルのデータとして読める状態にすること”です。それから合成の作業をパソコン上でして、そのデジタルデータを今度は現像所でレコーディングし、フィルムに戻します。予算は…作業にかかる時間にも拠りますしピンきりで、はっきりとは言えないですね。

現場では、どういう風に撮影するんですか

光学: 例えば刀を合成するシーンでしたら、まず刀があるように芝居をしてもらい、それを撮影しますよね。それから同じカメラポジションのまま、役者さんにどいてもらって(※2)「空舞台(からぶたい)」をとっておきます。特にCGI用素材として(※3)白玉と銀玉いれ込みで一部「空舞台」を撮っておくと後で非常に役にたちます。それから、刀の映り込み用にまわりの状況をスチールの写真で撮影しておく事も必要です。

服が斬られるのとかはどうやるんですか

光学: 方法は、いくつかあるんです。一つは最初に切りこみを入れておいて、後で合成でくっつける方法。もう一つは、まずは切りこみを入れないで芝居をしてもらい、今度は切りこみを入れて同じ芝居をしてもらう、その二つを組み合わせて合成する。斬る前の芝居が長いか、斬った後の芝居が長いかによって方法を変えますね。

電波少年などでも使っていますが、合成で使う(※4)「ブルーバック」とか「グリーンバック」とか「黒バック」とか「白バック」とか色々ありますよね。どういう時にどれを使うんでしょうか
光学: 俳優さんが着る衣裳によって違います。衣裳に“青”が入っている場合は、「ブルーバック」は使いません。青い色の部分をデジタル処理でキャンセルすると、透明に透けてしまうからです。「ブルーバック」「グリーンバック」などその色によって抜けがいいとか、エッジが綺麗とか色々特色があるようですが、僕は個人的には「グリーンバック」はあまり好きじゃないですね。それは人の肌にはグリーンが入っているので、その色をデジタル作業上、一括してキャンセルする(抜く)と血の気が引いたような顔色になってしまうからなんです。あと…「血しぶき」の場合は、「ブルーバック」でやるといいと思いますね。血の透けや照り具合(明るいところと暗いところ)の細かいところまで分りますから。

作業をする上で、ビデオとフィルムの違いはあるんですか

光学: 「ビデオ」というのは“発光する画をみる媒体”で一秒間30フレームで出来ているんです。「フィルム」は、“反射した光をみる媒体”で一秒間に24コマ。作業面積はフィルムの方が4倍以上大きいですからデータとしては重いですけれど、髪の毛の一本一本まで見る事が出来ますから作業はしやすいですよ。

ここで橋本さんやっと戻ってきてくれました。

たいへんなことはなんでしょうか

光学: 監督のイメージが事前に決まっていないことや思いつきでアイデアを言われる時ですね。ですから事前にイメージを持ってもらえるとやりやすいですよね。

橋本: 僕の場合は抱えている合成スタッフをプロデュースしなければいけないですし、監督やプロデューサー、そしてスタッフの要求を引き出して、それに答えなければいけません。尚且つ、納品を守るのがやっぱりたいへんですね。だけどたいへんな事と楽しい事はイコールな事が多いですから、チャレンジ出来るチャンスだと思ってやっていますよ。

どうやったら合成の仕事に就けるものなんでしょうか?

橋本: う~ん、なかなか「これ」とは言えないですね。デジタル系のそういう学校にいっても、フィルムを扱える技術は得られないんです。だからまわりに知っている人がいる方が入りやすいですよね。でも、「なる人はなる」んですよ。思いがある人は、どんなことがあってもそこへの道を求めてやってきますからね。

光学: 本当にそうだと思います。監督になりたい人は、取りあえず自分でフィルムをまわし始めて自分で何か撮りますし、造形をやりたい人は、ダンボールでもなんでもいいから模倣で作ってみますよ。(※5)マットペインターをやりたい人も、まず描いてみるでしょう?本当にやりたい人は、まず何か「行動」を起しますよ。

最後に何か一言お願いします

橋本: 今では「空舞台を撮って下さい」と現場で言っても、そんなにたいへんな事ではないのですが、それこそ10年前は中々スタッフにも理解してもらえなかったので、最初は色々とたいへんでした。今やっと認められて、理解を得られるところまできた感じがしています。

光学: 日本アカデミーに視覚効果賞を是非作ってほしいですね。日本映画も小粒でも面白いものを作ってゆきますので、見ていてください。映画の合成の部分で「不思議だな。どうやっているんだろう」と興味を持ってローリングを見てもらえたら嬉しいですね。

インタビュー後記

だいたいたまこが面白いと思う人はバランスがとれていないところがある人なのかもしれません。ある事がすご~く好きだったり、何か興味のある事が出来ると、とにかくずっとずっとそれと向き合い、結局それをいつか物にしてしまう人。とにかく諦めない!!だから人には「やる人」と「やらない人」しか存在しないのかもしれません。諦める人と諦めない人。(ま、諦める事も時には大事でしょうけれどね)

自分の子供の頃を思い出すと、確かに小学生のたまこにも極端の「芽」がありました。好きで好きでたまらなかったものを求めて学校をさぼったことがある。警察に補導された事もある。(でも、ぐれていたんじゃないんですよぉ)あのエネルギーは何だったのでしょう。そして18年たった今、その好きで好きでたまらなかった人たちと実際一緒に仕事が出来るようになりました。よいエネルギーはよい結果を招くと信じています。

(※1)モーションコントロールカメラ…コンピューターによって管理された装置にカメラの動きを認識させ、何度も同じカメラワークをさせる事が可能。コマ撮りや合成などあらゆる特殊撮影に対応する。

(※2)空舞台(からぶたい)…例えばあるカットを撮ったあと、そのままカメラポジションを動かさないで(同じポジションのまま)、被写体の人物だけにどいてもらい「空(から)」の情景を撮ること。この空舞台を利用して、合成をする事が多々ある。
(※3)白玉と銀玉…合成の素材用に用意された大きさ20センチぐらいの銀の玉と白玉のこと。白玉は反射を、銀玉は映りこみの参考にする。


(※4)ブルーバック…テレビ番組「電波少年」などでもお馴染みの合成用の大きな布。ブルーバックならば「青」、グリーンバックならば「緑」がデジタルデータでキャンセルされると、見た目が透明の状態になる。
(※5)マットペインター…例えば、古代ローマの遺跡やお城、SF、ファンタジーものの映画など想像力をふくらませる背景画面は描かれたものが多い。その絵(マットペイント)を描く人のこと。